古き善き物

 千晴の曾祖父は粋で洒落者だったらしい。今は全く使われなくなった着物や小物が雑多に奥座敷と納戸に詰め込まれいる。

「コレ、虫干しすんのはいいけどよぉ、片付け方がわかんねぇよ」
「安心しろ、俺がわかる。千晴、こっちもだ」
「てめぇ、何から何まで引っ張り出しやがって、ふざけんな」

 ほっかむりにマスクの千晴が喚いているが無視して、箪笥の引き出しをひっくり返すと中から古い布に包まれた煙管が出てきた。

「……これ、使っていいか?」

 洒落た細工が彫られている。

「ああ? いいんじゃね? じいさんも好きにしていいっつってたし、誰も使わねぇだろ、てか使えねぇよ。ちゃんと使い方知ってるヤツに使ってもらえば、嬉しいかもな」
「なかなかロマンチストじゃねぇか」
「うるせぇ、うお、何だこりゃ」

 悪態を吐きながら千晴は虫干しを続けている。




「なあ、いっそ、洗濯機で洗った方が早くね?」

 ずらりと並んだ虫干し着物の前で千晴はうんざりした声で呟いた。

「馬鹿だろお前。着物が傷むんだよ。折角の良い物が台無しになンだろ」
「知らねぇよ、良い物って何だよ。俺にはさっぱりだね、カビくせーし、下駄やら雪駄まで、ったくひいじいさんってのはとんだ道楽者だったってことだな」

 縁側に寝転がってぶつぶつ言っている千晴を小突く。

「腹が減った。何か作れ」
「何だそれ、お前何もしてねぇじゃねぇか、それで飯を要求するって大概にしとけよ」
「そうだな、じゃあ俺が何か作ればいいのか、まあ、作ってもいいがいろいろ保証はできねぇぞ、それでてめぇがいいんなら」
「いや、よくねぇ。俺の台所は俺が守る。よし、焼き飯でも作るか、残り物がいろいろあったしな」

 勢い良く立ち上がると千晴は台所へ向かった。と思ったら引き返してきて右手には

「晋助、ファ○リーズはダメかよ、コレ、カビくせーの取れんじゃね?」

阿呆がアホ面下げて笑っていた。


It is over.

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