おせち
「なあ、年末にお前はここにいていいワケ?」
江戸から頻繁にやってくる高杉晋助におせちの黒豆を煮付けながら真剣な顔で問うてみる。
「まあ、今のところ、おとなしくしてねぇとな、千晴、昆布巻きと田作りは作らねぇのか」
珍しく鍋を覗き込む晋助は少し楽しそうに見えた。
「さすがに、田作りは無理だな。ばあさんに教えては貰ったけどよ、昆布巻きは出来るぞ、あとは栗きんとんか」
「甘ぇヤツはダメだ。バカになる」
「? バカにはなんねぇよ、何言ってんだよ。美味いのに」
「……俺ァ、栗だけでいい」
顔をしかめて台所を出ていく晋助に声を掛ける。
仏間にずらりと並んでいるお歳暮を晋助が睨みつけている。
じいさんの知り合いから毎年、いくつかお歳暮が届く。好きにしていいと言われているので、食材はなかなか重宝している。
「酒が少ねぇな」
手前にある『大吟醸』と記されている一升瓶を持ち上げると俺に突き出した。
「今晩はコレでいい。そのまま冷やでな」
「俺は居酒屋じゃねぇぞ」
「居酒屋よりうめえもん作るクセに何言ってやがる」
「……く、っそー……」
本気なのかお世辞なのか、このわがまま男にいいように乗せられる自分に腹が立つ。けれど、何故か悪い気はしない。
「千晴、年越しの蕎麦は天麩羅より油揚げがいい」
「俺はそば屋じゃねぇ」
It is over.
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