特売と主婦

 特売のチラシが入ったので、いつも買い物に行くスーパーとは違う所へ足を延ばした。
 チラシ以外の物もいろいろ安くて嬉しさのあまり我を忘れて、厄介な居候とはぐれてしまった。

(まぁ、晋助のことだ、欲しいモン見つけたら、買えってあっちからやってくるだろ)

 あのわがまま男は食べる物にうるさい。けれど、好き嫌いはなく俺の作った物はきれいに残さず、文句を言いながらも完食する。

(残さずに食べるんだよな、マズイとかウマイとか言えっつうんだよ)
「!! 俺、主婦みたいになってんじゃん」

 思わず自分の思ったことに対してツッコミを入れてしまった。握った大根に力が入る。

「ブリ大根に熱燗、あとは春菊のおひたしだ」

 俺の横にふらりと春菊の束を持った男が偉そうに立っていた。
 優雅に着物を着こなす隻眼の男は特売スーパーで無駄に目立っている。

「春菊のおひたしって、苦くね?」
「そこがいいんだろ」

 鼻で笑うとその束を買い物かごの中へ入れた。

「何だよその余裕な感じ、ムカツク。言っとくけど作るのは俺だかんな、金出すもの俺だし」
「そういう小せぇことを言うんじゃねぇよ、ほら、行くぞ」

 行くぞと言った晋助のうしろを歩きながら

「やっぱムカツク、居候のクセに………………俺っ、どんどん主婦っぽくなってんじゃん!」

 はたと自分の立ち位置にまた、ツッコミを入れてしまう。

「じゃあ、俺ァ旦那か、まあ、それも悪くねぇか」
「末恐ろしいこと言うんじゃねぇ、働かない旦那なんてサイアクだよ」
「そこじゃねぇだろ……」


It is over.

[back]

ALICE+