白石さん

「生命の理に手ぇ出して、責任、持てんのか」
「うるせぇ、小難しいこと言ってねぇで、なんか包むモン」

 買い物帰り、道端で死にかかっている子猫を拾った。
 千晴がむきになって、必死になっていた。

「どうすっか……今月の食費」
「……だから、命の理に手ぇ出すからだろ」
「居候のクセに威張んじゃねぇよ」
「それより、てめえが学舎へ行ってる間、どうすんだ」
「何、決まりきったこと聞くんだよ。晋助が面倒見るに決まってんだろ」

 平然と言い放った千晴に呆れて言葉を失った。

「薬なのか、鼻水なのかわかりゃしねぇなぁ」

 縁側で小さな箱に入った瀕死の小さな猫に液状の薬を与える。
 粘膜に直接吸収させるのだろう、一滴二滴と鼻と目にしずくを落とす。
 子猫は左目がふさがっている。獣医師の話だと感染症を起こしており、このまま見えなくなる可能性もあるという。

「これで見えるようになったら、もうけもんだなぁ」

 陽の光を全身に浴びて、痩せた小さな猫は眠っている。

「お前も俺も、千晴に拾われたモン同士だ」



「喜べ、晋助。三日間の臨時バイトが入った。食費がなんとかなりそうだ。それに白石さんの治療代もなんとかなりそうだぞ」
「誰だ、白石って」
「あ? そいつだよ、可愛いだろう白石さん」
「てめぇの名付けのセンスがよくわからねえ」
「白黒のブチ柄で短いしっぽが丸い石みてぇだから」

 得意げな顔で笑う千晴の思考回路は単純だ。


It is over.

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