まめな人

 目つきの悪い若旦那、グレたお坊ちゃま、不良なボンボン、どれもおかしいが晋助にはどれもぴったりくると思う。

 生け花のハサミの音は久しぶりだ。ばあさんが亡くなってから花を生ける人間はいなかった。
 手際よく正月用の花やら松やらを生けていく晋助をぼんやり眺めながら、ばあさんが生きていたら大喜びしただろうなあ、なんて考えていた。

「千晴、ぼんやりしてねえで黒っぽい花器があっただろう、あれも持ってこい」
「あ? ああ、いや、でも、どこに飾るんだよ」
「コレは奥の床の間、もう一つは玄関だ」
「そんないろいろ飾ったら片付けが大変じゃねえか」
「正月くらい片付けのことを忘れたらどうだ。まあ、俺は飾るだけだが」
「ほら、そこだよ。結局、晋助はなんもしねぇじゃねえか」

 一仕事終えた感、満載の晋助は縁側で白石さんとのんびりしている。
 熱いほうじ茶と煮えたばかりの黒豆を少し差し出す。

「なあ、江戸でやることねえの、お前」
「なんだ、邪魔か」
「そうじゃなくてよ。花、生けたり、大安売り書いたり、おせちつまみ食いしたり、ちょこっとだけ掃除したり、いろいろしてっけど、江戸でそういうことしなくていいのかと思って」
「俺より忠実なのがいろいろやるからな、それから俺ァつまみ食いなんてことはしてねぇぞ、てめえが勝手に出すんじゃねえか」

 しれっと言い放った晋助が楊枝の先の黒豆を口に含む。

「まだ、味が滲みてねえが、なかなかいい味つけだ」
「そりゃ、どうも」

 縁側でほうじ茶を飲む晋助は若旦那というより、どこかのご隠居さんだ。


It is over.

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