手を繋ぐ

 困った。
 徹夜続きで意識が朦朧としていて迷子状態だ。なんとかかぶき町には辿り着いたが、自宅に帰りつけない。
 さっきから同じところをぐるぐる歩き回っている。自分の家に帰れないなんて・・・・・・俺に帰巣本能は無いらしい。
 ため息をついてしゃがみ込む。眠気が襲ってくるので立ち止まるのはよくないが、疲労困憊でこれ以上体力的に無理。
 どこかの店の軒下で休ませて貰おう。
「何、やってんの怜ちゃん」
 呆れた声が頭の上から降ってくる。
「あ」
「“あ”じゃないよ、行き倒れ寸前だなオイ。働き過ぎも大概にしとけよコノヤロー」
 眉間にシワを寄せて銀髪天然パーマが怒っている。
「えっと・・・・・・俺の家はどこでしょう」
 愛想笑いをしてみる。
「ここから目と鼻の先、迎えにきた銀さんにありがとうを言いましょう」
 不遜な顔で天パが言うので
「アリガトウゴザイマス」
 ふらつきながら立ち上がると天パが手を差し出す。
「手ぇかせ、手」
「大丈夫デス」
「うるせえ、大丈夫とか大丈夫じゃないとかそういう問題じゃないんだよ。自分の家に帰り着けないクセになに言ってんだ、ほら、さっさと手ぇ出せ」
 家には帰りたい。でも、手を繋ぐのは抵抗がある。真っ昼間だし、大通りだし・・・・・・眠気と闘いながら躊躇していると
「行き倒れ寸前なのに何を悩んでいるのかなぁ」
 強引に俺の手を引っ張り歩き出した天パは珍しく歩調が速い。
「ちょ、ちょっと待っ」
 ぐいぐい引っ張って歩く天パに着いていくのが大変で思わず繋いでいる手を強く握り返せば、歩みがピタリと止まる。
「な・・・・・・に?」
 息を整えながら天パを見ると
「よし!」
 ニヤリと笑って今度はゆっくり歩き出した。
 何が“よし”なのかわからない。

 俺の手を引いて満足そうな顔の天パがかぶき町の真ん中を歩く。
 普段なら絶対にしないが、今日は睡魔と闘わないといけないので、手は繋いだままでいいとしよう。


It is over.

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