デートですか?

 どうしよう、思わずペアチケットで前売り入場券を買ってしまった。
 ものすごく行きたい、そして入場特典も欲しい。今、購入したばかりの前売り入場券を見つめ決意を固める。




「あ、あのさ、えー……と、その、なんというか」

 銀髪天パが鼻をほじりながら週刊少年ジャンプを読んでいる。

「ああ? なに?」

 全くもってやる気のない返事とだらけきった死んだ魚のような目で俺を見る。

「いや、その…………土曜日……」

 今週末、奇跡のような連休になっている。出掛けるならこの週末なんだけど

「あの、ヒマかなと、思って」
「ヒマっていえばヒマだけど、ヒマじゃないっていえばヒマじゃない」

 読んでいるのか読んでいないのかわからないジャンプのページをめくりながら、はっきりしない返事をされる。

「それ、どっちなんだよ…………もし、さ、あの……」

 何と言って切り出したらいいのか、しどろもどろになる。

「……」

 天パが不審な目で見ている。
 ダメだ、俺、こういうの苦手だった。

「ごめん……何でも、ない」

 あきらめる。ペアチケットだけど、ひとりで行こう。入場特典も諦めよう。

「おじゃま、しました」

 小さくため息を吐いて、踵を返す。

「ぱぁつあん、土曜日、仕事入ってないよなぁ」
「入ってませんよ。ウチはいつもヒマですよ」
「いつもとか言うんじゃねぇよ」

 台所にいる新八と天パがやりとりをはじめる。

「え、と……コレ、一緒に……行かない?」

 思い切ってチケットを天パに差し出して、誘ってみる。

「やぁぁぁっと言ったな、ったく、いつ誘ってくれんのかと銀さん、ドキドキしてたんですけど」
「え? 知ってた、の?」

 神妙な顔で咳払いをしながら

「知りません。でも、なんとなく怜のおかしな挙動とか雰囲気で、なんかあるのかなぁと」
「怜さん、わかりやすいですよ。万事屋来て、すぐに銀さんの所に行ったでしょ、それも珍しく緊張した顔で、銀さんじゃなくてもわかります」

 新八が楽しそうに笑いながらお茶とみたらし団子を出してくれる。

「デート、どこ行くんですか」

 俺の握っていたチケットを覗き込んだ新八は不思議そうな声を出した。

「古代エジプト展?」
「うん、あっデートじゃないよ、俺が行きたくて誘っただけだし」
「いや、あの、怜さん、そういうのをデートと言うんです」
「そう? コレさ、ペアチケットだと入場特典があるんだ」

 チケットの下の方に記載されている入場特典プレゼントを指さす。

「へぇー……『クリスタル・スカル風すとらっぷ』ですか」
「そうだよ、かっこいいだろ」
「ははは……まぁ、そうですね……銀さん? ちょっと銀さん、何してるんですか」

 新八とすとらっぷの話をしている最中も天パは何故か前売り入場券を凝視して固まっている。

「怜ちゃん、あのぉこれ、ここに『世界最古のミイラ』って書いてあるんですけどぉ」

 チケットの見出しともいうべきところを示している。

「エジプト展だからミイラに決まってるだろ。世界最古とか最後の王かもしれないとか数体展示されるんだけど」

 天パの顔色が青ざめていくのがわかる。

「……ミイラ、きらい?」
「好きなヤツなんかいるかぁぁぁ、なんで、なんでミイラなの、はじめて怜がデートに誘ってくれたのに……それが」

 じゃあ行かないのかと聞けば、行くに決まっていると強い口調で言われたが、天パは涙目だった。



It is over.

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