「太一、そんなのバッグにつけてたっけ?」
部室で着替えていると、隣で着替えていた太一のエナメルバッグに見慣れないマスコットみたいなのがつけられていて、気になって訊ねた。太一は少し恥ずかしそうで、でもどこか嬉しそうな表情を見せた。
「あー、これ?まぁ、ちょっとな」
「気になる。教えろよ」
「…最近気になってる子からもらったんだよ、部活頑張れるお守りだって」
見せてもらったそれはフェルトで作られた、丸いバレーボールのの形をした小さなマスコットだった。裏面には白鳥沢のユニフォームに太一の背番号とMBの文字、あとハートマークが一つ描かれていた。完全に好意がある相手へのプレゼントってだし、太一も気になる子からもらったって、両想いじゃねーかよ。
「そういや、白布は?ミョウジからこういうのもらわないの?」
「あいつには無理だろ。裁縫苦手なの知ってるし」
「けど、料理できんじゃん。調理実習の時、同じ班の奴らすげー感動してたじゃん」
「たしかに料理は美味い。けど、裁縫ってなるとひどい。小学校ん時、ナップサック作るのやったじゃん。あいつ結局授業中に作り終わらなくて、数ヶ月かかってやっと出来上がったんだけど、見事に入り口部分縫い付けてたんだからな。どうしたらそうなるんだって呆れたわ」
「すげーな」
「だからナマエにはそういうの期待してない」
「ふーん」
ナマエは同じ小学校で、同じ中学に進んで、一緒に白鳥沢受験して受かって、その日に告白して付き合い始めた俺の彼女。太一には期待してないと言ったけど、本音を言えば少しだけ羨ましいとは思う。そんなのなくてもナマエは試合には応援に来てくれるし、バレー優先な俺でもかっこいいって言ってくれるから、それで十分だった。
数日後、指にたくさんの絆創膏を巻いたナマエが、「川西くんが、賢くんがこういうの欲しそうにしてたって教えてくれたから」と渡してきたそれは、太一のと同じようなマスコットだった。形も歪で縫い方も荒い。それでもナマエが苦手な裁縫を俺の為に頑張ってくれたのが伝わり、部室前だというのにナマエを抱きしめた。そのあと散々先輩たちにからかわれたが、今の俺にはそんなの気にならないくらい気分がよかった。