午前中で終わるはずだった練習が少しだけ伸びて、待ち合わせの時間は30分近く過ぎていた。待ち合わせ場所の駅前に向かって全力で走っていると、ナマエの後ろ姿が見えた。ナマエの前には大学生くらいの男が立っていて、ナマエの腕を掴んでいた。
「もう一時間くらい待ってんじゃん。そんな男ほっといて俺と遊ぼうって」
「鉄朗くんは絶対来てくれるから待ちます」
「健気だね〜。ますます俺の好みのタイプ」
「私の好みのタイプは鉄朗くんだけです。はぁ…いい加減、手、離してくれません?」
「俺とデートしてくれるなら、離してあげてもいいよ」
「お金積まれてもお断りしますわ」
ナマエの声は明らかに怒りと呆れを含んでいて、とても冷ややかだった。ナンパしている男も諦めが悪そうなバカっぽい顔をしていた。俺はナマエの背後に静かに近づくと、後ろから腕を伸ばして、ナマエの身体を抱き寄せた。胸元にとんっとナマエの背中があたり、ナマエの腕からナンパ男の手を振り払った。
「こいつは俺のだから。他あたってくれる?オニーサン」
「ひっ!」
上から見下しながらそう言えば、ナンパ男は一目散に逃げていった。ナマエの体に回していた腕にナマエの手が触れた。
「部活、お疲れ様」
「待たせてゴメンな」
「気にしないで。走ってきてくれたのわかってるし、ナンパ男からも助けてくれたもの」
「んじゃ、デートいきますか」
「うん!」
腕を解いて、ナマエの隣に立ち、手を握った。久しぶりのデートは時間を忘れるくらい愉しかった。