その日もコビーの姿は海軍本部にあった。手には小さい花束を握り、とある執務室のドアの前に立っていた。一度ゆっくりと深呼吸をしてからドアをノックする。
「はい」
「コビーです!入室許可を」
「どうぞ」
中の人物から入室許可を得たコビーはドアを開け執務室に入った。デスクに向かい作業している手を止め、ドアのところに立つコビー視線を向けたナマエはくすっと笑った。
「コビー大佐、今日もお花を持ってきてくれたの?」
「はい!ナマエさんが本部にいる間はこうして花を届ける約束をしましたから」
「ありがとう。じゃあ、いつもの花瓶に飾ってくれる?」
「わかりました」
コビーはデスクの近くにあるチェストに置いてある空の花瓶に部屋の中にある水道で水を汲み、それに花束を生けた。チェストには五つくらい花瓶が並んでおり、全てに小さな花束が飾られていた。その花はどれもコビーがナマエに贈ったものだ。
「コビー大佐は次の任務はいつから?」
「三日後からです。北の海近くで海賊が市民へ危害を加えているというので。ナマエさんはこの前の任務の報告書ですか?」
「うん。それより、コビー大佐。海軍内での私への呼び方は?」
「あっ!すみません、ナマエ准将」
「わかればよろしい」
コビーがあまりに申し訳なさそうにしている姿を見て、ナマエは席を立った。そしてコビーの手を引いてデスクの前に置かれた二人掛けのソファーに座った。
「私は君よりも二つ年上で、一応階級も一つだけど上にあたるコビー大佐の上に立つ人間なの。海兵歴も君より長いし、上司として慕ってくれるのは嬉しいけど立場と場所はちゃんと弁えて動かないとだめだよ」
ナマエの言葉にコビーは顔を上げ、慰めるように添えられていたナマエの手を両手でぐっと握った。
「年齢のことは仕方ないですけど、活躍が認められれば階級は上げられますよね」
「う、うん?そうだね」
「たしかに僕はナマエさんのことを上司としても尊敬しています。でも一人の女性としても、とても魅力的な方だと思っています。それに僕があなたに花をこうして届けるのは、僕が海軍にいない間もここに飾られた花を見て僕を思い出してほしいからです。それに届ける花も花言葉を調べてから来てるんですよ。今日持ってきた向日葵の花言葉は「あこがれ」「あなたは素晴らしい」「あなただけを見つめる」僕の想いはいつも花束に込めて贈っていたんですよ。ナマエさんがそれに気づいてくれていたか、わかりませんが…」
幼いころに海軍に救われそのまま海軍で働くようになったナマエには花言葉を察するようなことはできなかった。かわいい部下だと思っていたコビーからの想いをストレートな言葉にされたことで、ナマエの顔はじわじわと熱が上がっていくようだった。その時、デスクの電伝虫が鳴った。
「はっ、はい!ナマエです。コビー大佐ならここにいますが、わかりました、伝えます」
「ナマエさん?」
「ヘルメッポ少佐からよ。ガープ中将があなたを呼んでいるって」
「そうですか。では、僕はこれで失礼します」
コビーがドアのほうに向かうのをナマエはデスクのところから見つめていた。
「次の任務に発つまで、また花持っておきますね。だから僕から逃げないでください。では、失礼しました、ナマエ准将」
ぱたりと音を立てて閉まるドアを見てナマエはこの短い間でコビーのことをかわいい部下としてはもう見れなくなってしまったような気がした。
「……あんな男くさい顔もできるんだ」
有言実行でコビーは三日後の任務に発つまで毎日ナマエの元を訪れ、無事に帰ることができたらちゃんと告白しますと言い残し次の任務に向かうのだった。