午後の授業は魔の時間だ。昼飯で腹も膨れて、しかもこの季節は窓からの光も暖かくて心地よい。おまけに、今は古典の文章を年配の女の先生が読み上げている。眠たくなる要素しかない授業の真っ最中だ。オレの左隣、窓側の席に座るナマエも睡魔に負けてしまったらしく、こくりこくりと頭が舟を漕いでいる。一番後ろの席だから、ナマエのそんな姿は今はオレしか見ていない。

「……かわいすぎだろ」

好きなやつの無防備な姿に、健全な男子高校生であるオレは当然かわいいと思ってしまう。思わずニヤケそうになる口元は手で隠しながら、横目でナマエの様子を伺う。ナマエの手に握られたシャープペンは白いノートに不規則な線を増やしていった。
あと10分ほどで授業も終わるし、そろそろ起こしてやった方がいいな。オレはナマエの方に手を伸ばすと、肩を軽く揺すった。

「ナマエ、起きろ」
「…んぅ……んっ」

ナマエの目がゆっくりと開かれて、俺の方に顔を向けた。オレは手を戻して、小声で話した。

「おはよ。よく寝てたな。あと10分くらいで終わるぞ、授業」
「え?あ、ほんとだ」
「あてられなくてよかったな」
「うん。もしかして、サボくん寝顔見た?」
「ばっちり」
「うわぁ恥ずかしい」
「かわいい寝顔だったし、オレはいいもの見れたよ」
「か、かわっ!?え、そんなことないって絶対」
「好きな子なら寝顔だってかわいく見えるのは普通だと思うぞ」
「……んんっ!?すき?好きって、え?私のことをサボくんが!?」
「そんなに驚くことか?それより、すっかり目覚めたみたいでよかったな。次の時間は寝るなよ。あ、オレ次の時間の教科書忘れたからエースに借りてこねぇと」

いつの間にか授業は終わり、先生もいなくなっていた。オレはそう言い残して自分の席を離れた。背中にナマエからの視線を感じつつ、戻ってきたら少しはオレのこと意識してくれるようになっていたらいいなと思いながらエースの教室に向かった。

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