買い出しから学園に戻っていると、留三郎は前を歩く背中に見覚えがあり声をかけた。
「ナマエ」
「あ、食満先輩!」
振り返ったナマエは小走りで留三郎に駆け寄った。
「お前も買い出しか?」
「はい。そろそろ新しい紅が欲しくて」
「その、よかったら学園まで一緒に帰るか?」
「はい!」
留三郎とナマエは掌一つの距離を開けて並んで歩き始めた。
「いつも用具委員の手伝いを頼んで悪いな」
「私でよければいつでもお手伝いさせてください。それに用具委員会の下級生の子たち、みんなかわいくて私も楽しいので」
「あいつら、次はいつお前が来るんだと俺に催促するんだ。よかったらまた手伝いに来てやってくれ」
「食満先輩からの頼みなら断れませんね」
笑うナマエを見ていると、髪につけている櫛が目に留まった。
「その櫛、つけてくれたんだな」
「食満先輩にいただいてから、こうして町へ出かける時はつけるようにしてるんですよ」
「そうか。使ってくれてよかった」
用具委員の仕事を手伝ってくれたナマエへ、礼にと留三郎が櫛をくれたことがナマエは嬉しかった。くのいちのたまごとしてナマエは表には出していないが留三郎のことを好いていたし、留三郎もそんなナマエのことが気になっていた。だが、お互いどうしていいかがわからず、周囲の方がやきもきしていた。
「留三郎、そこはすかさず「似合っている」って褒めるべきところだよ!」
「伊作の言うとおりだ。できれば「似合っている」と言いながら頭を撫でてやるのがいいな」
「お前ら楽しそうだな」
「そう言いながら文次郎だってしっかり覗いているじゃないか」
「もそ」
「それに尾行するって言い出したのも文次郎だぞ」
「お、俺は留の野郎がくのたまに唆されてるんじゃないかって気になっただけでっ」
「あれはどう見ても両想いだって」
「しかも二人揃って奥手のな」
「そろそろ進展があればいいんだけど」
「伊作が飛び出していけば不運でなんとかなるんじゃないか?」
「伊作の不運に巻き込まれるナマエが可哀そうだ」
「留三郎に見つかる前に、私達も学園に帰った方がいい」
「もそ」
い組の二人の冷静な判断により五人は尾行を止め、一足先に学園に戻った。留三郎はつけてきている気配が消えたのを察すると、ナマエの手を握った。
「っ、食満先輩?」
「その櫛も似合っているし、今日のお前もかわいらしい、と思う」
「んっ」
「さ、さあ!帰るぞ!」
繋いだ手はそのままに顔を真っ赤にして二人は学園までの道を歩いた。