誰かを好きになったり、付き合ったり、そういうのはめんどくさいと思っていた。だけどミョウジにはそういうことを思わなくて、俺のこと好きになってほしくて、隣にいてほしくて、教室で眠っていた俺をいつもみたいに起こしに来たミョウジに告白した。
「俺、ミョウジのこと好きだよ」
「私も凪くんのことが好きだよ」
恋人になれて嬉しかった。ずっとミョウジを大切にしたいと思った。でも、最近ミョウジが俺以外の奴と話している姿を見るともやもやする。玲王に言ったら「凪も嫉妬とかするんだな」って驚いていて、これが嫉妬なんだと知った。嫉妬、めんどくさい。
「ねぇ玲王、どうしたら嫉妬ってしなくなる?」
「うーん。どうしたらって言っても、諏訪に他の奴と喋るなっていうわけにもいかないだろ」
「でもできたら話してほしくない。っていうか、あんま笑顔とか見せないでほしい」
「お前がそんなに独占欲強いなんて、意外すぎて結構びっくりしたわ」
「ミョウジを俺の部屋に閉じ込めたらチョキと帰りを待っててくれるじゃん。それもいいなー」
「監禁は犯罪だぞ」
「考えるのめんどくさい」
「いっそのこと結婚の約束しちゃえばいいじゃん。凪ならプロのサッカー選手になれるだろうし将来性も悪くない」
玲王の言葉が俺の身体を雷のように駆け抜けた。そっか、その手があった。
「玲王ってやっぱ天才」
「え?もしかして真に受けた?」
「凪くん、いますか?」
サッカー部の部室のドアから顔を出したミョウジ。今日は一緒に帰るって約束してたっけ。ちょうどいいじゃん。
「ミョウジ、ここにきて」
俺は寝転んでいたベンチに座りなおして空いているスペースを叩いてミョウジを呼んだ。俺とミョウジと玲王の三人しかいない部室。ミョウジは言われた通り俺の隣に座ると不思議そうに俺を見上げた。かわいい。玲王は少し離れたところで心配そうに俺達を見ている。
「左手貸して」
「左手?」
ミョウジが差し出した左手の手首を握って逃げられないようにして、口を開いてミョウジの左手の薬指を根元まで咥えて噛んだ。
「っ!な、なっ、凪くん!?」
「んっ」
「お、おい!何してんだ、凪!」
「痛っ!」
「っは、できた」
解放したミョウジの左手の薬指にはくっきりと跡がついていた。
「指輪は持ってないけど、ここは俺が予約したって証拠ね。跡が消える前に指輪も買いに行こう。玲王、次の休みっていつだっけ?」
「待って待って、凪くん、説明が足りない。どうして噛んだの?予約ってなに?指輪って?」
「これ以上嫉妬してめんどくさいの嫌だし、ミョウジと結婚してミョウジは俺のってなればもう安心だって思ったから。あ、もしかしてこれってプロポーズ?もしかしてミョウジ、理想のプロポーズとかあった?ごめん、俺そこまで考えてなかった」
俺の言葉でミョウジは真っ赤になって顔を手で覆ってしまった。え、もしかして勝手にプロポーズとかしちゃったから俺フラれたりする?恐る恐るミョウジの様子を伺うと小声で何か言っていた。
「……理解が追い付かないけど凪くんかっこよすぎる、もう無理…」
「!?」
「よ、よかったじゃん、凪。じゃあ俺ばぁや待たせてるから先帰るな。あ、次の休みは日曜日だから御影のやってるジュエリーショップ予約しといてやるよ」
そう言って玲王は部室から出て行った。御影のジュエリーショップで売ってる指輪っていくらするんだろう。出世払いでいけるかな。そんなことを思いながら、俺はミョウジが落ち着くのを待った。もう嫉妬はしなくてよさそう。