役得と言ったら語弊があるだろうか。現に彼女は困っているんだから、そう思いながらも俺は今の状況を楽しんでいた。
「ごめんなさい、サボくん。私のせいで」
「いや、ナマエは悪くないさ。能力者がいるとは思わなかった俺の対策も不十分だった」
とある小さな島で住民たちが海賊に武器の製造を強制していると情報が入り、革命軍としても見逃せず、製造拠点の破壊を目的に送り込まれたのが俺と数名のメンバーだった。その中には、俺の恋人でもあるナマエも含まれていた。
武器の製造拠点を制圧し、海賊も倒したと思っていたが、海賊の一人に悪魔の実の能力者がおり、倒れ際にナマエに向かってその力を放った。
「ナマエっ!」
ナマエはその場に膝をついたが、見た目には何の変化も起きず安心した。しかし、ナマエの言葉はその安心を容易く否定した。
「サボくん……目が見えないの…真っ暗」
能力者が気を失っているにも関わらずナマエは視力を奪われたまま。時間経過で元に戻るタイプの能力と判断し、ナマエの目が戻るまで俺はナマエのサポートをすることにした。
「そのままで歩く方が危ないな。よっと」
「わわっ」
俺はナマエを横抱きにして抱えると、船に向かって歩き始めた。
「俺の首に腕回しとかないと落ちるぞ」
「ひ、人前でそんなことっ」
「というか、そうしてくれる方が俺もナマエが安定して歩きやすいからさ」
「…そういうことなら」
おずおずと俺の首に回されるナマエの腕に思わず頬が緩む。いつもなら恥ずかしがってこんな風に抱かせてはくれないし、やっぱり男としては嬉しい。目が見えてないナマエに今キスしたらどうなるかなとか、いろいろ邪なことを考えてしまう。参謀総長なんて肩書があっても、所詮は俺もただの男だ。