「好き」という言葉を初めて異性に言ったのは、中学三年生になったばかり時で、相手は今僕の隣を歩いているナマエだった。

「そういえばさ」
「ん?」
「僕たち、付き合ってもうすぐ一年経つんじゃない?」
「そうだよ。蛍くん、よく覚えてたね〜」

ナマエは手をぐっと伸ばして、まるで子供にするように僕の頭を撫でた。身長差があるから、少し背伸びもしている姿ですらかわいいと思う。撫でていた手を掴み、指を絡めるように握り直した。

「撫でないで。ってか、こういう記念日的なことって女子の君のほうが覚えたり言い出すもんじゃないの?」
「たしかにそうかも」
「ナマエは、お祝いとかしたい?」
「私?うーん…どうかなぁ」

空いている方の手を口に当てて悩む仕草をしているナマエを見て、一年前よりずっと大人っぽくなった気がした。それはきっと高校生になって彼女がメイクとか髪形とか、そういうことに気を遣うようになったからだろう。ナマエを見下ろしていた僕と、何か思いついたらしく僕を見上げたナマエと、目線がかちあった。

「記念日のお祝いできたら嬉しいと思うけど、私は蛍くんといられる時間はいつも嬉しいから、別にいいかな」

はにかみながらそう言ったナマエがどうしようもなく愛おしく感じた。気が付けばナマエを抱きしめていた。

「え、ちょ、け、蛍くん?」
「ほんとに、どうしてくれるわけ」
「私、何か蛍くんの気に障ることしちゃった、かな?」
「あえて言うならかわいすぎるナマエが悪い」
「え?…んっ」

そう言って僕は噛みつくようにナマエにキスをした。こんなに愛おしいなんて感情に調子を狂わされるのも、全部君のせいだ。

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