「しーらーぶくん」

太一と部活に向かって歩いていて、階段の下を通り過ぎようとした時、上の方から名前を呼ばれた。そちらへ向くと、ミョウジが立っていた。俺の片想いの相手のミョウジナマエ。ギリギリスカートの中が見えそうで見えない位置、隣に太一がいるから見えなくてよかった。

「今から部活?」
「うん」
「そっか、頑張ってね」
「ミョウジは?今日は観に来ないの?」
「行きたいんだけど、今日はママとパパとお食事会なの。きゃっ!」

そう言いながら三分の二くらい下りてきていたミョウジが階段から足を踏み外し、上体が前に傾いた。落ちると思った瞬間、体が先に動いた。

「ミョウジ!」
「賢二郎!」
「うぐっ」

ミョウジの体を正面から受け止め、右腕を回し、左手で手すりを掴んだ。なんとか二人揃って階段から落ちることは防げた。下からバタバタと太一が上ってきて、俺を起こしてくれた。

「お前、無茶しすぎ。大丈夫かよ」
「さんきゅ。なんとか平気。それより」

階段の段差に座りなおして、はっとした。俺の胸元に顔を埋めているミョウジの体は、落下する恐怖からか少し震えていた。

「ミョウジ、もう大丈夫だから」

落ち着かせるように頭と背中を撫でてやれば、ミョウジはゆっくりと顔を上げた。

「…あ、ありがとう。白布くん」
「どういたしまして。それより怪我とかしてない?」
「うん。大丈夫」
「なら、よかった」
「……やっぱり、白布くんは私の王子様かも」

目は涙で潤んでいて、それなのにふわりと嬉しそうに笑ってそう言ったミョウジにちょっとドキッとした。これは期待していいかもしれない。

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