最近ナマエが俺に隠れてこそこそとコアラとなにやら企んでいるような気がする。あえて俺が会議や作戦でいない時を狙って、二人で話しこんでいることがあるらしい。
今日も食堂で二人は並んで机の下に手をやり、俺が入ってきたことにも気づかず話していた。
「コアラちゃん、これでどう?できてる?」
「この前より全然できてるよ!あとはタイミングときっかけだね。大丈夫!ナマエなら一撃必殺だよ」
ナマエは本部で連絡作業と解析が主な仕事の非戦闘員だから、最低限の護衛術くらいしか知らないはずなのに、必殺とかコアラのやつとなにを企んでやがる。
「ナマエ、なにしてるんだ?」
「サ、サボくん」
自分でも声が低くなっているのがわかった。コアラとこそこそしている間、俺はナマエとの時間が減った。いつもの口調じゃない俺の雰囲気を察したのか、コアラがナマエに耳打ちした。
「え!?今!?」
「うん!今こそ練習の成果を見せるときだと思う!目の前のヤキモチ焼きサボくんにお見舞しちゃえ」
「は?なんの話をしてるんだ?」
全く話が読めずにいると、ナマエがすっと立ち上がり、俺の目の前に立った。
「すぅ…はぁ…よし!」
一度深呼吸したナマエは少し右足を後ろに引き、そのまま右腕も肘を曲げ後ろに引いた。
「く、くらえ!サボくん!わ、私の竜爪拳」
右手で見覚えのある形を作ると、俺の心臓のある左胸に右手をこつんとぶつけた。そして俺の顔を下から見上げた。照れているのか、ほんのり赤くなった顔と上目遣い、それに俺の技を真似してきたナマエに、俺は呆気なく負け、その場に崩れ落ちた。
「ほらー!やったじゃん!ナマエならサボくんのこと倒せるって!」
「え、え?ほんとに私できちゃったの、竜爪拳?やったー!ありがとう!コアラちゃん!」
手を取り合って喜ぶ二人の声を聞きながら、周囲の「総長がやられた!」「いや、あれは恋人にやられたらそうなるだろ」「羨ましい」なんて声を聞きながら、俺が立ち上がるにはもう少し時間がかかると思った。