オレの彼女の口癖は少し変わっている。
「ほんとにサボくんは顔がいいね」
今日もナマエはオレの顔を見ながら、うっとりとした様子でオレを褒める。
「顔以外はよくないのか?」
「そんなことないよ!声もかっこいいし、運動神経もいい、成績もいいし、社交的で人気者でしょ。そのうえで、顔がいいの」
「へー」
「なんで私みたいな平々凡々の一般市民が彼女なんだろうって思っちゃう」
「それはオレがナマエのことを好きだからだろ」
「えへへ、ありがとう。私もサボくんのこと、大好きだよ」
はにかみながら笑うナマエを見てると愛おしさがこみ上げてくる。
ナマエの中でのオレの最高評価部分はどうやら顔らしい。話していて急に無言になったかと思うと、「顔がいい」って言葉がぽつりと零れている。好みのタイプの顔とは少し違うらしいが、オレとしてはずっと片想いしていたナマエと付き合えるならと、勿論この顔を利用した。ナマエはそういう経験が少なく、オレのアプローチに恥ずかしそうにしながらも、だんだんとオレを異性として意識してくれるようになった。ただ、恋人になってからも「顔がいい」の言葉が止まることはなかった。
「サボくんの顔がよすぎて永遠眺められるね。あ、また写真撮っていい?」
「この前も言ったろ。写真撮るならナマエと一緒じゃないとオレは撮らせないって」
「むー。サボくんだけの写真がいいのに」
「オレはナマエとの一緒がいい」
そう言いながらも自撮りアプリを起動させたナマエはオレとの距離を詰めた。お互いの肩が触れ合って、ナマエの肩に手を回した。ナマエが角度を調整しながら、カメラを準備をする。
「このへんかな、盛れるの」
「見つかった?」
「うん。じゃあ撮るよ。タイマー3秒だからね」
ボタンを押して3秒後にぱしゃりとシャッターが落ちて、ナマエとオレの2ショットが自動保存された。画像フォルダを開いて確認する。オレもナマエも笑顔の写真が増えていた。
「満足した?」
「うん」
「じゃあ今度はオレを満足させて」
ナマエの身体を軽々と持ち上げ、そのままベッドに押し倒した。片膝を足の間に入れ、唇を重ねて、舌を絡ませる。ちゅっと音を立てて身体を離すと、ほんのり顔が赤くなって、目がとろんとしているナマエの姿にぞくりとした。
「はぁ、はぁ、サボくん」
「いいな、その顔」
ナマエの口癖を真似たわけじゃないし、意味も全然違うけど、思わずオレもそんな言葉を零していた。