1ヶ月ぶりの革命軍の本拠地に戻って来れたというのに、恋人であるナマエの出迎えがなかった。その不満が露骨に顔に出てしまったようで、コアラに先にナマエの顔を見てきていいと、執務室から追い出されてしまった。コアラの厚意に甘え、居住区にあるナマエの部屋に向かった。ドアをノックしても中からは返事がない。ドアを開けようとしたが、鍵がかかっていた。もしナマエが不在でも部屋の中で待っていればいいかと、合鍵を使ってドアを開けたが、中の様子を見て思わずその場に固まった。
「な、なんだ、これ…」
普段のナマエからは考えられないような部屋の荒れっぷりで、床にも物が散乱していた。ナマエの部屋には最低限のベッドとチェスト、全身鏡とローテブルくらいしかないし、いつも綺麗に片付いているというのに、前に来た時とは様子が違い過ぎていた。床の物を踏まないように気をつけながら、なんとかベッドに辿りつき、そこに腰を下ろした。
「ん?」
ベッドも布団や服の類が雑に乗っかっているような状況だったが、枕の近くに置かれた物が目に留まった。
「これって、オレの写真?」
新聞の切り抜きだったり、手配書だったり、少なくとも10枚はありそうだ。それが枕元に置かれ、何枚かはシワが寄っている。
「どういうことだこれ」
「あれ、鍵開いてる?」
「ナマエ」
「っサボくん!?」
オレの姿と部屋の状況を見て、ナマエの顔から血の気が引いていくのが見えた。ナマエは部屋に入ると勢いよくドアを閉め、その場にへたり込んでしまった。ドアに頭を押し付けているのか、オレの位置からは顔までは見えない。
「………最悪」
「え?」
「油断してた…たしかにそろそろ帰還する日も近かったけど、まさかこんな状態を見られるなんて……ほんっと最悪…」
そっとナマエに近付いて、同じようにしゃがんでから、後ろから抱きしめた。
「えっと、とりあえず、ただいま」
「……………おかえりなさい、サボくん」
耳元で呟けば、ようやく聞きたかった言葉がナマエの口から聞けた。よくわからないが、こんな風に凹んで自己嫌悪中になっているナマエは珍しかった。
「これ、どういうことか聞いてもいいか?」
抱きしめているナマエの身体に力が籠るのがわかった。重い口が開くまでにたぶん数分は待った。
「サボくんが、遠征に行くとこうなっちゃうの。一人の部屋が寂しくて、サボくんの匂いも少しずつ薄くなっていって。サボくんとデートした時に着た服とか引っ張り出しては、話したこととか思い出したり。手配書見て、あぁかっこいいなぁ、怪我したりしてないかなって考えたりしてるうちに、部屋がこんな感じになっちゃうようになって。いつもは帰還の連絡が入ったら片付けするようにしてたんだけど、ここ数日、私も事後処理が忙しくてそんな余裕なかったの」
「なるほどな」
「サボくんにだけは見られたくなかったのに」
明らかに落ち込んでいるナマエだが、顔がにやついてとまらない。ナマエがどんなにオレのことを好きか、それがこの部屋に表れているとわかって、嬉しくないわけがない。ナマエの身体に回していた腕に力を込めて、ナマエの身体を抱きしめた。
「オレは嬉しい」
「え?」
「離れていてもナマエがオレのことで頭いっぱいなんだってわかって嬉しいよ」
「……引かないの?こんな重たいの」
「引くわけないだろ。オレもナマエのこと好きすぎてやべぇなって思う時あるし」
「ふふっ」
「やっと笑ったな」
オレの腕の中でナマエがくるりと身体を動かして、ようやく顔が見れた。秘密にしていたことがオレにばれて余程恥ずかしかったのか涙目だし、顔もまだ赤い。かわいい、かわいい。額や頬にキスを落としていくとくすぐったそうに反応するナマエがまた愛おしくてたまらなくなった。