その日は自分の執務室で溜りに溜った書類の相手が俺の仕事だった。どちらかといえば、体を動かしている方が好きだから、書類仕事は退屈でしかない。でも、減ることもなく溜っていく書類の山を見たコアラに今日は一日執務室から出るなと言われた。
「あー飽きた」
コンコンとドアがノックされ開いた。
「サボくん、少し休憩はいかがですか」
「ナマエ!」
ドアから現れたのは恋人のナマエ。ナマエはティーセットを持って、執務室に入ってきた。ローテーブルにティーセットを置くと、手慣れた様子で紅茶を注ぎ、カップを俺のデスクに置いた。
「お仕事お疲れ様です。リラックス効果のある紅茶ですよ」
「ありがとう。いい香りだな」
カップを口元に運ぶと優しい香りがした。しっかりと香りを嗅いでから紅茶を飲んだ。ナマエはそんな様子を俺の傍に立ち、ニコニコと笑顔で見つめていた。
「うん、美味い」
そう言って一旦カップをデスクに置いた俺はナマエの手を勢いよく引いた。咄嗟のことにナマエは俺にされるがまま、俺の太ももに座るような姿勢になった。慌てて逃げようする彼女の腰に腕を回し、逃げ場も奪う。
「サボくん!私、重いから!離して!」
「何言ってるんだ。こんなに軽いじゃないか。逆に心配になるぞ」
「そんなわけないし、は、恥ずかしいから下して」
「それは聞けない頼みだな。それに、ナマエがここにいてくれる方が書類もはかどると思う」
「……そういう言い方はずるいよ」
諦めてくれたのか、ナマエの頬にちゅっとリップ音を立ててキスをする俺に、ナマエは黙るしかできなかった。さっさと終わらせたかった仕事も、今ならもう少しだけゆっくりやってもいいかもしれない。