昼休み、教室で友人とお弁当を食べながらのおしゃべり。高校三年、花の女子高生最後の一年もこうして恋愛トーク的なものは尽きない。

「菅原って、なんかこうバレー部のオカンって感じするよね」
「わかる、女子のトークとかに普通に混じってても違和感ないわー」
「たしかに。それに比べたら澤村とかもう子持ちのパパっぽい」
「結婚するなら澤村っぽい人がいいよね〜」
「みんなの想像力がすごすぎるよ」
「ナマエはこういうのあんまり話したがらないもんね?気になってる人とかいないの?」
「ナイショ。ごちそうさまでした」

 一足先に食べ終わり、手を合わせてから、お弁当箱を片付け始めた。

「ミョウジ」
「ひゃっ!あ、菅原くん」

 後ろから急に肩を叩かれ、小さく悲鳴を上げてしまった。後ろを振り向くと、さっき話題に上がっていた菅原くんが立っていた。

「昼休みなのにごめんな。俺とミョウジ、今週週番だろ。担任が資料取りに行けってさ」
「もう食べ終わったから大丈夫だよ。ごめん、ちょっと行ってくるから、机お願いしていい?」
「いいよー」

 机を戻すのを頼んでから、席を立ち、私は菅原くんと教室を出た。まだ廊下は生徒が賑やかに昼休みを満喫している中、菅原くんと並んで歩くのが少し緊張した。

「ど、どこまで行くの?」
「社会科準備室。今度の課外授業で使う冊子だって」
「そっか」
「……あのさ」
「ん?」
「さっきの話なんだけど」
「さっきの?」
「ミョウジが気になるやつがいるかどうかっていうの」
「き、聞いてた?」
「いや、ちょっと、聞こえただけだべ。でさ、いるの?そういうやつ」
「いないいない!ああいう答え方しないとみんな聞き出そうとするから」
「…そっか。いないのか」

 慌てて否定した私と、ほんの少し残念そうにそう言った菅原くんとの間に、妙な空気が下りてきた。しばらく歩いて廊下の角を曲がろうとした瞬間、私は反対側から同じく曲がってきた人とぶつかった。相手の人はどうやら走ってきたらしく、結構な衝撃でぶつかり、倒れると思い、目を瞑って次の衝撃を覚悟した。しかし、予想した衝撃は来ず、私の身体は暖かいものに包まれていた。目を開けると、黒い布地。

「危なかったべ……ミョウジ、大丈夫か?」

 頭の上から聞こえる声に、倒れそうになった私を菅原くんが抱きとめてくれている、そう理解した途端、顔が一気に熱くなった。身体に回された腕は女の子より太くて、薄いと思った胸元もしっかりと筋肉がついていて、女の子と全然違う。菅原くんも男の人の身体をしていた。

「だ、大丈夫。ありがとう…その、もうそろ、離してくれて平気だよ」
「……じゃあさ」
「え?」
「ミョウジが俺のこと、ミョウジを気になってる男って意識してくれるんなら離してやるべ」

 顔を動かして見上げた菅原くんの顔は、真剣な目で私を見ていた。心臓がうるさいくらいに高鳴っている私は、とっくに菅原くんを意識してしまっているのに。

back top