今思えば結構衝撃的な出逢い方をしたと思う。
偵察のために来ていた島の街中を走っていた子供が大柄な海兵にぶつかって、持っていた絵の具で制服を汚してしまった。子供の方は泣いて謝っていたが、ガラの悪い海兵だったようで、その子供を叩こうと手を挙げた。止めに入るべく身を乗り出した瞬間、海兵はものすごい勢いで近くの民家の壁に飛ばされていった。

「子供に手を挙げるなんて、背中に正義を背負う人間のやることじゃないです」

声の主はコアラと同じくらいの歳の女の子だった。右足だけで立っている姿からして、おそらく左足だけで蹴り飛ばした様子にオレは思わず笑ってしまった。

「すごいな、あの子」
「このくそアマっ!よくもやってくれたな!」

蹴り飛ばされた海兵が起き上がって、今度は彼女に襲い掛かろうとした。しかし、彼女は海兵を躱し腕を掴んだかと思うと、そのまま地面に叩きつけた。

「女の子に手を挙げるなんて最低ですよ、ほんと。しばらく寝てやがれです」
「ナマエちゃん!大丈夫かい?」
「大丈夫です。最近の海兵はほんと質が悪いんだから」

完全に意識を失った海兵を横目に、街中の人たちは彼女を取り囲んで心配していた。泣いている子供を抱っこすると、彼女は駆けつけた母親に渡した。

「泣かないで。もう大丈夫だから」
「ナマエお姉ちゃん、すっごい強いね!かっこいい!」
「海賊も海兵でも、いじわるする悪い人は全部私が許さないんだから」

彼女は満面の笑みを浮かべてそう答えた。その笑顔を見た瞬間、心臓がきゅっと掴まれたような感覚が走った。海兵は別の海兵によって連れていかれ、周囲の人が彼女の正当防衛を主張したこともあって、その場は落ち着いた。
オレはそのまま屋根をつたい、彼女の跡を追った。街はずれの公園のベンチに座って本を読みだした彼女の隣に座った。

「なぁ」
「はい?」
「お前、強いな。さっき海兵を蹴り飛ばして投げたの見てた」

そう言うと、彼女は本からオレへと視線を移した。腰まで伸ばされた黒髪と薄蒼色の目が綺麗だった。

「お恥ずかしいところをお見せしました」
「かっこいいと思ったよ。何かやってたのか?」
「祖父が武道の愛好家で、昔からよく教わっていました。おかげで少しだけ、みんなよりも強いです。ところで、あなたは?」
「オレは革命軍のサボ」
「革命軍?」
「世界政府にケンカ売ってる集団だ。この世界のルールを壊すために」
「その革命軍の方が私に何の御用でしょう?」
「スカウトだ。革命軍に入らないか?ナマエ」
「え?」
「オレの力になってほしい。一目惚れしちまったんだよ、お前に」

彼女は目をぱちぱちとさせたかと思うと、顔を真っ赤にして、オレの頬をひっぱたいた。そしてその場から脱兎のごとく逃げてしまった。それから3か月かけてオレは彼女の元に通い口説き続け、ようやく革命軍に入ってくれることになった。革命軍に入ってからもオレのサポートをよくしてくれて、気づいたらオレはナマエのことが好きなっていた。そして今となっては恋人兼相棒という存在になった。あとから聞いた話だと、ナマエは恋愛経験なんてなかったらしく、オレが一目惚れしたと言ったことに照れて、その時からのオレのことが好きになっていたらしい。

back top