記憶が戻ってからも、オレの中に兄弟を忘れていたことと、エースの死という現実に魘される日はあった。そんな時は本部のバルコニーから空を見上げるのが習慣になっていた。んなオレに気づいたのは恋人のナマエで、ナマエもオレのそれに付き合ってくれるようになった。
「悪いな、いつも」
「ううん、大丈夫。私がサボくんのそばにいたいだけ」
「そうか」
置かれたベンチに手を繋いだまま座って、ナマエはオレの方に体を預けている。ナマエの温もりを感じる左側から魘された嫌な気持ちが薄らいでいく気がした。
「エースがさ」
「うん」
「『お前はサボ。オレとルフィの兄弟だ』って教えてくれたみたいで嬉しいのと同時に、後悔とか哀しいとかいろいろ考えちまうし、それより今は早くルフィに会って『オレが生きてる、お前は一人じゃない』って伝えたいって思うんだ」
「ルフィくんはきっとサボくんに会ったら泣いちゃうかもね」
「そうか?」
「死んだと思っていた大好きなお兄ちゃんが生きてたら、誰だって嬉しい泣きしちゃうと思うけど」
「たしかにな」
「サボくんも嬉し泣きしそうだね」
「泣いたとしても、ルフィの前じゃかっこつかないだろ」
ナマエの言うとおり、ルフィの前では泣かない自信はあるけど、きっとオレも嬉しくて泣くかもしれない。
「サボくんが頂上戦争の中でルフィくんが生きててくれてよかったって思ってるように、ルフィくんもきっとサボくんが生きててよかったって思うよ」
「だといいな」
新聞を読む限り、海軍はルフィのことも消そうとしたが、白ひげ海賊団の隊長含めいろんな奴がルフィを守って生かしてくれたらしい。ルフィを守ってくれた奴ら全員に感謝しかない。
「こうして記憶を取り戻してもサボくんはサボくんのままでいてくれたことが私は嬉しい」
「オレは変わらないさ。この世界を変えてやるんだ」
「いつか私もルフィくんに会いたいな」
「その時はちゃんと紹介するよ。オレの大事な人だって」
「楽しみにしてるね」
「そろそろ部屋に戻るか」
そう言って立ち上がって、ナマエの手を引いて自室に戻るため、静かな廊下を歩いた。繋いだナマエの手を握りしめると、ナマエも握り返しれくれた。