最近オレには悩みがある。
大学のカフェテリアの端っこの席にいるナマエを見つけた。ナマエは手に持ったスマホの画面に夢中でオレの存在に気づいていない。後ろから近づいて、ナマエの耳につけられたイヤホンを取り上げる。
「っ!あ、サボくん」
「お前また動画見てるのかよ」
「だって、かっこいいだもん…」
ナマエは先日一緒に行ったテーマパークのショーに出ていた男にハマったらしい。
オレなんてナマエに片想いを1年以上も続け、バイト先でもらったという名目でナマエが行きたがっていたテーマパークのチケットを用意して、ようやく誘えたというのに、この有様だ。その時のショーを録画した動画をナマエはしょっちゅう見るようになった。
「今度は自分でチケット取って見に行ってみようかな」
「無理だろ。服買い過ぎてお金ない、もやし生活するって言ってたの誰だよ」
「そ、それは」
「今日の夕飯、ルフィのリクエストで肉いっぱいカレーだけど、ナマエの分もルフィに食わせていいか?」
「だめ!サボくんのカレー美味しいから私も食べたい!」
これもナマエを家に誘う口実。じわりじわりとナマエの日常にオレがいることを当たり前にして、他人にはしないほど甘やかしているのに、ナマエはオレの好意にはまだ気づいてくれない。でも、ナマエの中では評価の高い男はオレだと、本人の口から聞いた。そろそろ真剣に告白してもいいかと思っていた矢先に、思わぬところに敵がいた。
ナマエの隣の席に座って、買ってきたコーヒーを一口飲む。今日はやけに苦く感じる。
「そんなにかっこいいのかよ、そいつ」
「うん!笑った顔はかわいいけど、きりっとして踊るときすごくかっこいいの!それにちょっと……に似てるし」
興奮したように話すナマエが急に声をボリュームを落とすから、何と言っているのか聞き取れなかった。似てる?誰にだ?
「似てるって誰にだよ」
「え?」
「そいつ、誰かに似てるのか?」
「あ、いや、えっと、その、雰囲気っていうか感じが似てて、好きだなぁって」
照れているのか顔を伏せるナマエの耳が少し赤い。そいつも誰かに似てて好きってことは、もう1人ナマエが好きな奴がいるってことかよ。
「オレにしとけよ」
「……え?」
「オレが一番ナマエのこと好きだ。だからオレを選べよ」
もっと雰囲気のいい場所で告白しようと思っていたのに、嫉妬で勢い余ってナマエに告白した。ナマエは驚いたような顔をしたかと思うと、顔を両手で隠してテーブルに伏せてしまった。
「ナマエ?」
「彼が似てるのは君だよ、サボくん。サボくんに似てるからちょっといいなって思っちゃったの。だって、私もサボくんのこと一番大好きだもん」
気がついたらここが大学のカフェテリアだということは頭から抜け落ちて、ナマエを抱きしめていた。