ソファーに寝転がって雑誌を読んでいたエースがいきなり大きな声を上げた。
「サボ!おい、サボ!!」
「どうしたんだよ、エース。そんなに声出さなくても聞こえてるって」
「これ!ナマエだろ!雑誌載ってんぞ!」
「はあ?」
キッチンで洗い物をしているオレのところまでエースは雑誌を持ってきて、開いたページをオレの顔の前に広げた。特集ページらしく、テーマは『街で見かけた可愛い女の子』と書いてあった。たしかこれ男性向けのファッション誌だよな。女の子載せて何が面白いのかと首を傾げていると、ページの左下をエースが指差した。
「ここ!これ、ナマエだよな?」
「ほんとだ」
そこには結構大きめの写真でオレの彼女であるナマエが載っていた。たしか先月デートした時に着てた服だと記憶にあった。オレが確認したのを見て、エースは雑誌を手元に戻した。
「えっと、『これから彼氏とデートだというナマエちゃん。彼がよく着ているベストとシャツに似た色を洋服にも取り入れて、お揃いのコーデに見えるよう意識しているという可愛い一面も!ナマエちゃんの彼氏が羨ましい〜』だとよ。たしかにサボの着る服に似てるな」
ナマエがそんなことを考えて服を選んでいるなんて初耳だった。デートの時、たしかにお揃いみたいだなって服のことを言ったら、嬉しそうな顔をしてたけど、意図してやってたのか。かわいすぎだろ、オレの彼女。
「こんな雑誌にこんなでかく載ったら、学校の奴らも結構見そうだよな」
「そうだな。ってか、ナマエがこういうのの写真撮らせるって珍しくね?これからデートってことは、サボと合流する前に撮られたのか」
「たぶんこういう雑誌って思ってなかったんだろうな。ナマエ、抜けてるところあるし。この前もナンパを普通に道案内してほしい人だって思って交番に連れて行ったらしい」
「なんだそれおもしろすぎ」
笑いながらエースはまたソファーに戻って行った。洗い物も終わって、エプロンで手を拭いてから、近くに置いていたスマートフォンを手に取った。ナマエとのメッセージを開いて、雑誌を見たことを送ると、ナマエから電話がかかってきた。
『こんばんは、サボくん。あのカメラの人、そういうことだったんだね』
「何て言って写真撮られたんだ?」
『女のカメラマンの人だったの。街中でおしゃれな服装の子の写真をいっぱい撮ってるって。女の人だったから、これからデートなんですとかいろいろ話しちゃった。もう恥ずかしい…』
「ナマエの可愛さはオレだけが知ってればいいと思ったけど、こういう風に載っちゃったら、ますますオレのだってアピールしないといけないな」
『サボくん、なんか面白がってない?』
「嬉しいんだよ。ナマエがオレとお揃いになるようにコーディネート考えてたこととかさ」
『内緒にしてたのに』
「次のデートの時は、一緒に服見に行こうか。あと、お揃いのアクセサリも買おうぜ」
『サボくんとお揃い嬉しいな』
電話口で嬉しそうな声のナマエの姿を思い浮かべつつ、次のデートが楽しみになった。
数か月後、オレとナマエはお揃いのコーディネートをして街を歩いていると、『仲良しカップルコーデ特集』なるものの取材で撮影されて、また雑誌に載ることになった。