エース処刑の新聞を見て記憶が戻って数日寝込んでいたオレが目を覚ました時、そばにいたのはハックとコアラだった。恋人のナマエは別の任務でバルディゴを離れているから、オレのことはまだ伝えていないとコアラは言った。
「ナマエちゃんにも話すんだよね?」
「あぁ、もちろん。記憶は戻っても、オレは何も変わってないからな」
「そっか」
オレには大切な兄弟がいたこと。エースは死んでしまったけど、兄として、エースの分までルフィのために何でもしてやりたいと思った。
「あのねサボくん」
コアラが慎重な口調で話し始めた。
「ん?どうした」
「びっくりしないでほしいんだけど、サボくんが起きたら言わないといけないと思ってて。実はサボくんが倒れた翌日から、ナマエちゃんがいる部隊と連絡が取れなくなったの」
「……え?」
「今回の任務は某王国での反乱の意志がある民衆との打ち合わせだったでしょ。そんなに危ない任務ってわけでもなかったし、ナマエちゃん含め3人の少数メンバーで行ってるんだけど、そのうちの1人から『革命軍の介入がバレそう』って電伝虫で連絡があったのを最後に、こっちからの連絡が取れなくなって」
「なんだって」
「ドラゴンさんにもすぐ伝えて副軍隊長が向かったんだけど、ナマエちゃんだけ海軍に捕まってたみたいなの」
「……海軍に!?」
「うん。もちろんナマエちゃんも他のメンバーも助けて全員ここへ連れて帰ってきたよ。ただ、ナマエちゃんが海軍から受けた取り調べが厳しかったのか、大きい傷が残っちゃって」
コアラの言葉に任務に出るオレの元に会いに来たナマエの姿を思い出した。ソファーに並んで座り、ナマエのお気に入りの紅茶を2人で飲む。任務に出発まであと3時間。
「もうすぐ出発だね」
「ちょっと長い任務になるけど、早めに終わらせて帰ってくるさ。でもナマエだって任務に出るんだろ」
「うん。日程的にサボくんが帰ってくるのをお迎えできるかわからないね。でも、あの王国の王族の身勝手さは見ていられないし、早く市民のみんなを助けてあげたいから」
「ナマエのおかえりが聞けないのは寂しいな」
オレはナマエの腰を抱きながら黒髪を撫でた。指の間をするすると流れていく綺麗な髪。ナマエ曰く、ワノ国出身の母親譲りらしい。
「絶対生きて帰って来いよ。ナマエの帰る場所はオレの腕の中だ」
「うん、約束する。サボくんもね」
そう言って抱きしめると、ナマエもオレの背中に腕を回してくれた。そんなナマエが負傷して戻ってきていて、この場にいないということは眠っているのか。いや、ナマエのことだ。きっと海軍に捕まったことや、傷を負ったこと、他の仲間にも迷惑をかけたことで、自分を責めてオレに会わせる顔がない、といったところだろう。オレはベッドから下りた。
「ナマエちゃんは本部の裏の花壇にいるよ。虚ろげな目で花を見てる」
「落ち込むときはいつもそうだ」
「サボくんが目を覚ましたことはまだ言ってない。余計気に病みそうだったから」
「わかった」
オレは医務室を出て、花壇まで走った。
ナマエにも聞いてほしいこと、言わないといけないことがある。生きてさえいてくれたらまた会える。エースが死をもってオレに教えてくれたこと。だから落ち込まないでいいんだ。オレがナマエを守るから。それを伝えないといけないと思った。