留三郎が単独の忍務に出て帰ってこない夜は、僕の部屋に恋仲であるナマエを呼んで朝まで一緒に眠る。一人用の布団は狭いけれど、二人でくっついて眠るのが好きだったし、時には交わることもあった。その度にどんどんナマエに対する愛おしさが増していった。
今日もいつものように寝間着で僕の部屋に来たナマエはいそいそと布団に潜り込んだ。
「伊作先輩もお布団入りましょう」
「あと二本は巻いておきたいんだ。だから少し待ってて」
ナマエは布団の半分を空けて、うつ伏せになって僕を誘った。だけど、明日は三年生が学園外での演習に出ると聞いていたし、忍務についている上級生も何人か帰ってくる予定だったから包帯の在庫が心もとなくて、僕は包帯巻き機を持ち出し、くるくると巻いていた。
「私も手伝いましょうか?」
「大丈夫。ナマエはお布団を暖めておいて」
「わかりました」
包帯を巻いているところなんて見ててもつまらないだろう、退屈させているかもしれない、そう思っていた。なのにナマエはいつも包帯を巻いている僕を楽しそうな眼で見てくれている。不思議に思っていたし、僕はそれが嬉しかった。
「ねえ、ナマエ」
「なんですか?伊作先輩」
「聞いてみたかったんだけど、どうして君はそんなに風に見ているんだい?」
「そんな風、とは?」
「僕が包帯を巻いているだけなのに楽しいそうに見てるから不思議だったんだ」
「楽しそう…うーん」
僕の指摘にナマエは顎に手を置いて考える素振りをした。どうやら本人は気付いていなかったらしい。そして答えが思いついたのか笑顔を浮かべた。
「きっと倖せを感じているからですかね」
「倖せ?」
「伊作先輩とこうして共に夜を過ごせることが倖せ。傷ついて帰るかもしれない誰かのために包帯を巻いている伊作先輩の優しい姿を一番特等席で見られることも倖せ。そして、包帯を巻きが終わったら伊作先輩が私を求めて全身で愛してくれることが倖せ」
ナマエの言葉に思わず巻いていた手が止まった。きっと今、ナマエの眼を見たら包帯を巻き終わらずにナマエを堪能してしまうだろう。昂ぶる気持ちを落ち着かせるように深呼吸を一度してから、また手を動かし始めた。僕の様子にナマエはくすくすと笑った。
「こういう誘い文句はお嫌いでしたか?」
「ううん。むしろ今すぐにでもナマエのこと抱きたいって思ったよ。だからこれが巻き終わるまでは待ってて」
お預けされているのはナマエなのか、僕なのか、二人ともなのか。ただ一つわかっているのは、今日は一本しか包帯を作ることはできないだろうということだけだ。