鉢屋はめんどくさい相手に絡まれたと後悔していた。

「はぁぁ、食満先輩かっこよすぎて直視できない…けどもっとお顔見たいし、お話したいよ…鉢屋くん、どうしたらいいと思う?」
「俺が食満先輩に変装してやろうか?」
「それは食満先輩じゃなくて鉢屋くんなので却下です」

運動場の隅にある木の上で昼寝をしていた鉢屋の真下に体操座りをしながら話し始めたナマエの存在に、鉢屋は小さく溜息をついた。くのたま教室の五年生であるナマエは入学当初に鉢屋の変装を見抜いたくのたまで、今となっては友人の一人でもある。
ナマエの話しはこうだ。先日忍たま、くのたま双方の五年生六年生で合同演習に出た際、怪我をしたところを六年生の食満留三郎に助けられ、一目惚れしてしまった。それからナマエは食満のことこっそりと見ては、うっとりとした恋をする乙女の表情をしていた。

「私も用具委員会に入ればよかった」
「そもそもくのたまは委員会活動してないだろ」
「用具委員だったらいつでも食満先輩にお話しする機会あるでしょ」
「俺がどうしたって?」
「!?」
「邪魔しちゃ悪いから雷蔵のところ行ってくる。しっかりやれよ、ナマエ」

いきなり現れた食満の姿に慌てふためくナマエをよそに、鉢屋は一瞬で気配を消してその場を去った。残されたナマエは食満からの隠れるように木の裏に隠れた。食満は頬をかきながら、ナマエの方を見ていた。

「なんかびっくりさせて悪かったな」
「い、いえ!大丈夫ですっ!……あぁ、食満先輩、今日もかっこいい」
「そういや、この前の怪我はもう平気なのか?」
「大丈夫です、全然元気です!」
「そうか、ならよかった。気になって伊作に聞いたんだけど、自分で聞いた方がいいって教えてくれなかったから、お前を探してたんだ」
「食満先輩が私を探していてくださった……嬉しすぎてしんじゃうかもしれない」

片想いをしている食満と話せたうえに、自分のことを気にかけてくれていたことが嬉しく、ナマエは顔を手で隠しながらその場に座り込んでしまった。

「お、おい!大丈夫か?」

顔を真っ赤にして涙目で食満を見上げるナマエの様子に、食満の心臓が一際大きくどきりと鳴ったが、一度深呼吸をしてからナマエを横抱きで抱え上げた。

「ひゃあ!け、けけ、食満先輩!?」
「顔も赤いし目も涙ぐんでるくらい体調悪いならそう言え。今なら伊作もいるはずだし、とりあえずこのまま保健室まで連れて行くぞ。俺の首に腕回して、しっかり掴まってろ」

食満はそのまま保健室まで駆け抜け、保健室に着く頃にはナマエは茹でた蛸のように真っ赤になり気を失っていた。そんなナマエを心配する食満を見ながら、善法寺は「留三郎はもうちょっと乙女心を学んだほうがいいね」と溜息をついた。

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