利き手である右腕を負傷してしまい、普段の業務にも支障が出るようになった。そこでヘルメッポさんが寄越したのは、ボクが密かに想いを寄せているナマエさんだった。
「コビーくんはすぐに身を張りすぎなの」
「すいません…でも、市民の方を守れてボクは満足ですから」
「私はそんなことでは褒めてあげません。最適解は市民を守り、海賊を討ち取り、無傷での帰還です。ガープ中将みたいな……あの人も例外ではありますけど」
ナマエさんは困ったような笑みを浮かべながら、机に座るボクにもできる左手で押印をしていくための書類を渡してくれた。ボクたちが本部に異動になったのと同じ頃に、北の海の支部からツル中将の部下として引き抜かれたのがナマエさんだ。ボクと同じ歳で気さくで、笑顔がかわいくて、でも怪我が多いボクを怒りながらも心配してくれている優しい人。惹かれるのに時間はかからなかった。そしてナマエさんもボクのことを特別に思ってくれている、そう感じることが多かった。
「ハンコ押すのも利き手じゃないと綺麗に推すの難しいです」
「一応、書類の中身にも目を通してね。報告書は私が代筆しましたけど、内容までは詳細にわからないので」
そう言われて書類の中身にも目を通す。負傷の原因となった海賊同士の抗争を制圧した時の報告書は事細かに書かれていた。
「結構大きい戦闘だったんだね」
「ボクたちが着いた頃にはすでに負傷者も結構いましたし、市民にも被害が及ぶ恐れがありましたから」
「……コビーくんが生きて帰ってきてくれてよかった」
「心配させて、すいません」
「ツルさんにも私も行かせてくださいって頼んだんだけど、別の任務があるから無理だって言われて、ずっとずっと心配だったんだから」
「そんな顔しないでください」
落ち込んだような顔をしたナマエさんの手を引いて、ボクはナマエさんを抱き寄せた。本部に来た時は身長も同じくらいだったのに、今ではボクの顔1つ分ナマエさんの身長を越してしまった。
「どうやったらコビーくんが絶対無事に帰ってきてくれるようになるかな」
「……ナマエさんがボクの恋人になるのはどうですか」
「え?」
ナマエさんの大きな目がボクを見上げた。
「ナマエさんみたいな可愛い恋人が待っていてくれたら絶対に生きて帰るぞって思います。死んでたまるかって。だからナマエさん、ボクの恋人になってくれませんか?」
じわじわと赤く染まっていくナマエさんの表情を見ていたらきっといい返事がもらえると思ってしまい、でもここでにやける顔を見せるのも男らしくないなとボクは必死に我慢した。