学園長先生から頼まれて街まで茶菓子を買いに出て、無事に買い物が終わったから忍術学園に帰りたいだけなのにと、ナマエはため息をついた。
「若いねーちゃんが一人で歩いてちゃ危ないから俺たちが護衛してやるって言ってんだよ」
「勿論、謝礼はねーちゃんの身体でいいぜ」
ならず者の男が四人でナマエを取り囲み、下衆な笑みを浮かべている。その気になればナマエ一人でも男たちを制圧できるかもと思いつつも、小袖では動きにくいし愛用の短刀は学園に置いてきてしまい、持っているのは小型の苦無が数本。
「ほら、あっちの森の方が近道だから行こうぜ」
男の一人がナマエの腕を掴み引っ張った。
「痛い!この手を離しなさい」
「強気な態度も悪くねぇな。そういう顔を啼かせるのが俺は結構好きなんだ」
ナマエが掴まれてない方の手で着物の合わせから忍ばせている苦無を掴もうとした瞬間、ナマエは背後から殺気を感じ、その場にしゃがみ込んだ。
「なにしてんだ、おい!ぐはっ」
「ごほっ!」
「くっ!」
「ひぃぃ、ぐえ!」
しゃがんだナマエの周りに男たちが次から次へと倒れていった。ナマエの前に音もなく着地した気配に目を開けて見上げると、利吉が立っていた。
「一人で戦わなかったのはいい判断だな」
「利吉さん」
「立てるか?」
利吉はナマエの手を握り、肩を抱きながら立たせると、そのまま学園の方に向かって歩き出した。
「どうして利吉さんがあそこに?」
「忍務が終わったところだから、父上に母上の元へ一緒に帰るよう言いに来たんだよ。勿論、お前も一緒に帰ろうと思って」
「なるほど、それで」
「ナマエの気配がしたから辿ってみたら変な男たちに囲まれているし、手まで掴まれているし、助けないわけにもいかないだろう」
「利吉さんのあんな物騒な殺気を浴びたのは久しぶりでした」
「私が怖くなったか?」
利吉はナマエを近くにあった木に押し付けた。背中には木、目の前には利吉が両腕を木につき、囲うようにナマエを真っ直ぐに見つめている。ならず者の男たちに囲まれている時より、こうして利吉たった一人に囲まれている方がナマエの心臓はうるさく鳴っていた。
「怖くなんてない。利吉さんはずっとかっこいいです」
「やけに素直だな」
利吉の手がナマエの顎に添えられ、上を向けさせると、利吉は自分の唇をそっと重ねた。触れては離れるだけの口吸いに少しだけ物足りなさを感じてしまったことにナマエは少しだけ恥ずかしくなった。
「物欲しげな顔をしているとここで襲うぞ」
「し、してません!それに屋外でもしません!」
ナマエをからかうのは利吉の愉しみであり、プロの忍者から一人の男になれる時間でもあった。二人はそのまま手を繋いで忍術学園まで戻ると、それを見た忍たま、くのたま双方に質問攻めにされるのだった。