生物委員会は俺以外は三年生という下級生の多さと、世話をしている生き物自体もいて、手が回りきれないというのが正直なところ。だからたまに、委員会に所属していないくのたま四年のナマエに手伝ってもらっている。
ナマエとの出会いは二年くらい前、ナマエが裏山で怪我をしている兎を見つけたが、当時の上級生たちには声をかけにくかったから一つ上の学年だった俺のところへ連れてきた。幸い兎の怪我も軽いもので数日後には裏山へ帰っていった。その時に俺はナマエに惚れてからずっと片想いを続けている。それからナマエはたびたび生物委員会に顔を出してくれるようになった。孫兵始め、他の後輩たちもナマエのことをくのたまだけど優しい先輩として懐いている。

「竹谷先輩、食堂のおばちゃんからの野菜の切れ端もらってきました」
「おう!いつも手伝ってくれてありがとな、ナマエ」
「どういたしまして」

ナマエから野菜がいっぱい入った籠を受け取り地面に置くと、平静を装いながらナマエの頭を撫でた。手を離すと、ナマエは少しだけ潤んだ目で俺の上目遣いで見つめてきた。さっきまで触れていた右手にじわりと汗が滲み、心臓がやけにうるさい。

「それに、私こうして竹谷先輩から頭撫でてもらえるの好きなんです」
「っ、そ、そうか」
「先輩、顔真っ赤ですよ」

ナマエは口元に笑みを浮かべながら俺の頬を指でつんつんとつついた。可愛すぎるだろ。俺はナマエの指を掴んで、そのまま指先に口づけた。
「た、竹谷、先輩…」

ぱっと手を離してやると、今度はナマエの顔が真っ赤になっていた。

「ナマエも真っ赤だな、顔」
「っせ、先輩が急に変なことするからですよ!」
「嫌だったか?」
「……嫌じゃない。嫌じゃないですけど、軽々しく女の子にこういうことすると誤解させちゃうからよくないと思います」
「誤解?」
「竹谷先輩が好いてくれてるんじゃないかって」

いつの間にかナマエの顔は少しだけ俺から背けられていた。いじらしい、可愛い。こういうナマエの姿にどんどん好きが増えていく。そんなことを思っていたら身体が勝手にナマエを抱きしめていた。女の子ってこんなに柔らかいのか。

「誤解じゃない。ずっと好きなんだ」
「え?」
「ナマエのことが、ずっと好きだ」

俺の言葉にナマエの腕がそっと俺の背中に回され、さらにぎゅっと距離が縮まった。

「私も好きです、竹谷先輩」

片想いだと思っていた俺の恋はこうして無事に実った。後から聞いたところでは、孫兵が気を利かせて俺達の元へ一年生たちが邪魔しに入らないようにしてくれていたらしい。やっぱりうちの後輩は頼りになる。

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