【それってつまりどういう意味?】
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付かず離れず。
この距離感が少し物足りなくなったのは、大分前の話。


「いい加減気付いてもらいたいものだが…」
「え、何に?」


独り言のように愚痴を溢せば、隣の彼女はしっかり拾ってくれる。
それだけこちらのことを気にかけてくれているのは、素直に嬉しい。
嬉しいのだが、そこから先が問題だったりする。


「君は私をどう思っているのだね?」
「アスミタ」


間を入れずに即答され、アスミタは脱力する。
ああ、選ぶ言葉を間違えた、と。

小さく溜息を洩らすと、やはり彼女はその変化を察してくれる。
けれども、察する方向がアスミタにとって予測不能というのが難点で。


「え、違った?ごめん。じゃあ電p……まではいかないか」
「どうしてそうなるのだろうな、君は」
「どうしてもそうしても…どう思うかって、連想ゲームじゃないの?あ、問答?」
「やはり君には回りくどい方法は向かんか…」
「皮肉?悪いけど皮肉の解釈は苦手だから…、言いたいことがあるならはっきり言ってくれないと分からないよ」
「そうだったな。では、率直に言おう。私は君を慕っている」
「え?そうなの?」


予想外と彼女はぽかんと呆気にとられた後、破顔した。
やっと通じたとアスミタが安堵するも、束の間、次に返って来た彼女の言葉にまたも脱力させられる。


「嬉しいけど、私、アスミタの手本になれるような大した人間じゃないよ」
「………それは慕う違いだ」
「え、じゃあ……ストーカー?アスミタってそんなに私にべったりだったっけ?」
「言いたくはないが、態とかね?」
「まさか。アスミタこそ…………ん?」


漸く何かがおかしいと違和感を覚えたらしく、彼女は黙り込む。

慕う。
1:(恋しく思い、また離れがたく思って)あとを追って行く。
2:会いたく思う。恋しく思う。なつかしく思う。
3:理想的な状態・人物などに対してそのようになりたいと願い望む。
(引用元「広辞苑」)


「3は違うってことだよね?1と2は…今一緒にいるから別に寂しくないでしょ?」
「何が言いたいのか皆目見当がつかんが、とりあえず君と私との観点が全く異なっていることだけはよく分かった」
「そうなの?じゃ、じゃあつまりどういう意味なの?」
「…………」


振り出しに戻る、とは、まさに今の状況を言うのだろう。
ほとほと頭を抱えたくなるものの、抱えたところで現状が好転するわけもなく…。

そんなことをアスミタが思っていた矢先、外野からの声が耳に入った。


『不憫なものだな…』
『全くじゃな』
『傍から見ていた我らでも分かったものを…』
『仕方あるまい。あやつはまさかアスミタが自分に好意を寄せているとは微塵も思ってはおるまいからのう』
『いや、好意自体は分かっているだろう。問題は好意違いなのだ』
『おお、そうかもしれん。思い込みとは恐いものじゃな』


人の気を全て知った上で言いたい放題言ってくれる同胞に、この時ばかりはアスミタも我慢の限界がきた。
一人でなおも云々と自問自答を続ける彼女から離れ、アスミタは無言のまま柱の陰にいるシオンと童虎のもとへ近づいて行く。

アスミタの放つ不穏な小宇宙にシオンと童虎は身の危険を覚えるも、悲しいかな時既に遅し。


「盗み聞きとは行儀が良い。余程暇とみえる」



逃げられないと分かった以上、ここは如何にしてアスミタの怒り(という名の八つ当たり)を治めるかが重要。
そう判断した二人は、慌てて己が言い分(言い訳とも言う)を捲し立てる。


「お、落ち着け」
「わ、わしらは友の身を案じてじゃな……」
「ほう、君たちの友である彼女に私がどうこうするとでも思った、と」
「どうしてそうなるのだ!お前のことも含めて案じていたのだぞ!」
「そ、そうじゃ!傍から見ていてじれったくて堪らんくてな。早くくっついてしまえば良いと日々思っておる」
「彼女は思い込みが激しいだろう?友と決めたらそれ以外考えられん。ならば言葉ではなくて行動に出た方が良いと思うのだ」
「ほれ、ここはいっそ多少強引に押してみてはどうじゃ?」
「…………弁解はそれだけかね?」


アスミタの小宇宙がみるみるうちに高まっていく。
どうやら焼け石に水どころか、火に油を注いでしまったらしい。


「君たちは少々おしゃべりが過ぎるようだ」
「「……………」」


今更口を噤んでも遅いぞ。
言葉で言われなくとも小宇宙で嫌というほど伝わった。

数秒後、シオンと童虎の断末魔が十二宮に木霊したという。










「好意違い……あっ、そっか、そういうことか」


放って置かれた彼女はというと、シオンと童虎の声に気づいてすぐ思考を止め、三人のやりとりをぼんやりと眺めていた。
無論一連の会話もばっちり聞こえており、そこで漸くアスミタの言わんとしていた意味に辿りついたというわけで。

ともあれ多少の尊い犠牲を払いつつも、アスミタの想いは無事彼女へと伝わったのだった。






(完)
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●鈍感な彼女のセリフ5題
3.それってつまりどういう意味?
配布元:確かに恋だった



2015/2
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