食事も同じものを選ぶ。






いくら己を客観的に見ようとも、主観を一切排除することは難しい。
殊に彼女関連の事象について、よく言えることである。

気付かされたのは食事の席での親友の何気ない一言。


「カミュ、お前甘いものは好かないのではなかったのか?」


日本で総帥として仕事をこなす女神の警護として、昼をともにしていた折のことだ。
バイキング形式だったため、各々食べたいものを自身の皿へと盛って席についた。
その際、ミロがカミュの皿を見て出た感想がそれである。

ミロの指摘にカミュは改めて己が皿を見つめた。
食わず嫌いのミロと違い、主食副食ともそれなりに栄養バランスのとれたものを選んでいる。
問題は大皿の方ではなく、どちらかといえばその横に点在する小皿…。
小皿には以前なら選ばなかったものがちらりほらり。
よくよく考えたら、そもそも小皿という選択肢すらなかった。
ミロ指摘は恐らくこの小皿のことだろう。


「………別に嫌いというわけではない」
「何なのだ、その間は。まさか自覚がなかったのか?」
「一体何の自覚だというのだ。私のことより、ミロ、お前は好き嫌いが激し過ぎる」


放って置くとそのまま口論に移行しそうな雰囲気を覆したのは、彼らが守護する女神こと沙織である。


「そういえばエナガお姉様もお好きでしたね。このクレームブリュレ。それに、こちらの杏仁豆腐にも」


沙織の言葉にカミュとミロの視線は自然と例の小皿へと向いた。
三人の視線を一身に受ける甘い甘いデザートたち。
これが人間、とりわけ女性ならたまらず溶けだしてしまうだろう。

そう言えば彼女も好きだったな、と、無意識に選んだデザートを見てカミュは思い出したが、すぐさま己の誤解に気が付いた。
彼女も、ではなく、彼女が好きだったのだ。
そして甘い物好きなエナガに付き合って、然程好きでもなかったデザート巡りをした結果、甘いものに耐性が付いただけでなく、気づけば彼女の好む物を選んでいたというわけである。

では何故己はエナガに付き合うようになったのか。
今日のように沙織の警護に付いて城戸邸で滞在していた時、たまたま沙織とエナガのやりとりを傍で聞いていたのが始まりだった。
二人は話題のスイーツ専門店に行く約束をしていたのだが、沙織の仕事で外せない用件が出来たため、行けなくなったというものだ。
問題だったのが店に予約を入れていたことで、キャンセルする必要はないから誰かと行ってほしいと沙織はエナガに言った。
もともとキャンセルするつもりだったエナガはといえば、誰かを誘うなんて考えてもいなかったらしい。
そこで幸か不幸か傍にいたカミュに白羽の矢が立った…というのがきっかけである。


「成程、そういうわけだったのだな」
「……………」


ミロが意味ありげにカミュを見る。
どういうわけだと言おうものなら、墓穴を掘るのは必至なため、カミュは無言を貫くしかなかった。
カミュが胸の内にいろいろなものを抱え込みながら耐えていると、二人の話の流れを変えるように沙織が口を開いた。


「あら、そう言うミロも同じでしょう。アボガド、嫌いではなかったのかしら?」
「そ、それは……」
「何度もお姉様に言われたのでしょう?美味しいから食べてみなさいと」
「何故そのようなことを……」


言って直ぐにその問いが愚問であることをミロは気づいた。
女同士の情報力、甘く見てはならない。
沙織とエナガのやりとりを目の当たりにして、今まで散々思い知らされてきたことである。

カミュに替わり今度はミロが二の句が継げなくなった。
これで喧嘩両成敗と締めるところだが、沙織はそこで終わらない。


「二人ともエナガお姉様が大好きなのですね。もちろん私も同じ気持ちです。仲が良いからこそ、自然と相手に似てくるものですから」


微笑む沙織の皿を見れば、案の定、エナガ好みの食べ物がちらほら混ざっている。
結局のところ、三人ともみな同じ、誰が誰をとやかく言える立場ではないのだ。

ただ、沙織の言う大好きとはまた違う意味を、己が内に持っていることにカミュたちが気づくのは、暫く時間がかかりそうだった。







(完)
==
この話のカミュは甘いもの苦手、ミロは食わず嫌いという設定に。
カミュ相手のはずが、みんな夢主と仲良しこよし展開になりました。

2014/12



トップページへ

- 25 -

*前次#


ページ: