傍目から見たらとても妖しい。
寒い寒い冬の夜。
そんな外の温度とは対照的に、城戸邸はいろんな意味で温かかった。
夕食後、グラード財団で催す新年行事などの会合で用意するデザート選び…という名目の試食会なるものが沙織とエナガの間で行われていた。
「お姉様、こちらのミルフィーユも美味しいですよ」
「本当?」
「ええ、さあどうぞ」
「ありがとう。ん、美味しいね。ほら、こっちの生チョコも程良い甘さで良いよ」
「まあ……本当、美味しいですね」
「あと、この生菓子もおすすめ。新年の茶会もするならやっぱり和菓子も欠かせないからね」
「確かに…ではその際にはこちらの菓子も考慮に入れておきます」
会話だけ聞く分なら当たり障りないどこでもある女同士のもの。
ただその光景を目の当たりにしている者たちにすれば、疑念と違和感を覚えることもあるようで。
殊にカノンとデスマスクに関しては、己が内に沸き起こるその感覚を止めることなく外に漏らした。
「どうみても友人の域を超えている気がしないでもないな」
「デキてんじゃねぇか?」
「世迷い事を!?貴様らはアテナを愚弄する気か!」
「ならアレはどうなんだよ、アレは」
沙織がエナガの頬に付いたチョコレートクリームを指で拭って口に運ぶ様を指さして、デスマスクはサガに問いかけた。
サガもサガで思うことがあるのか、ぐぬぬっ…と押し黙る。
お前も疑ってんじゃねぇかよ。
二つの非難の視線がサガを突き刺す。
何も言えなくなったサガの代わりに、今度はアフロディーテが口を開く。
「仲良きことは美しきことでいいだろうに。何を邪推するのやら」
「だけどよ、目の前で『はい、あーん♪』な食べさせ合いを見せられたら、邪推の一つや二つ、するのが普通だろ?」
「それが無粋だと言うのだ」
アフロディーテがきっぱりと言い放つ。
背後でそんなやりとりが繰り広げられていることなど露知らず、沙織とエナガは粗方試食し終えたのか、席を立とうとしていた。
「さて、これ以上食べると体に毒だから、歯磨きしようか」
「ふふっ、では歯磨きの後は一緒に経度な運動は如何です?」
「賛成。外に出歩くのは寒いし危ないから、部屋でストレッチと筋トレぐらいかな?」
「それなら私の部屋でいたしましょう。程良く汗をかいてからお風呂に入るというのは?」
「それならおしゃべりも程々にしてぐっすり眠れるね」
「ええ」
ちょっと待て、一緒に入る気か?
そして、更に一緒に寝る気か?
聞き捨てならない会話にまたもカノンとデスマスクの思考が一致した。
残るサガとアフロディーテはと言えば、既に既知の出来事であるがため、最早指摘する気すらない。
ただ、強いて言えば、サガは諦めの境地、アフロディーテは友情に感心といった違いがあるのだが。
困惑と諦念と様々な感情が入り混じった男どもの小宇宙を背に感じつつ、沙織はクスリと笑った。
彼らは自分とエナガの関係を羨ましがっている。
そう沙織は思っている。
(まだまだ。お姉様を渡すわけにはいきません)
密かに笑みを深くしつつ、沙織はエナガの腕に手を回す。
女神の真意に彼らが気づく日は、当分先のことになる。
(完)
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仲良し疑似百合ップルも大好物なのです。
2014/12
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