口直し


「君は本当に行儀が悪い。特にその口をなんとかしたまえ」
「通常運転通常運転。私のしゃべり方は今に始まったことじゃないでしょうが。もー酷いな」


傷つくよ、と、エナガがわざと泣く真似をすれば、案の定、漏れ聞こえたのは盛大な溜息。
行儀が悪い口が悪い。
エナガがシャカと会う度、シャカがよく口にするので、ある意味彼の口癖なのかと思っていたのだが、果たして本当にそうなのだろうか。
己の言動を振り返っても、如何せん自覚がないので顧みようがない。


「そんなに私って口悪い?」
「自覚がないのか。重症だぞ」
「や、いくらなんでも重症はないって。軽度?別にTPOは弁えてるからいいじゃん。細けぇころは気にスンナって話でしょ」
「それこそ口が悪いというものだ。いい加減直したらどうだね?」
「ん、ムリだて。無理無理無理」


わざとふざけて見れば、やはりというか何というか、シャカの眉間に刻まれる皺が増えた。
そろそろオイタが過ぎるかと大人しく謝ろうとするも、次のシャカの言葉に今度はエナガが解せぬという意味で眉間に皺を寄せる破目になる。


「では実力行使といこう」
「は?どうやって?言っとくけど、暴力反対だから」
「何も力で捻じ伏せることばかりをいう訳でもあるまい」
「ふーん。それならヤれば?どうせ大したk―−んッ!?」


最期まで言わない内に、エナガの口はシャカの口によって塞がれてしまう。
静かな時間はほんの数秒ほどであったが、その数秒がエナガにはとても長いものに感じた。


「な、な、なにすんの!」
「口直しだ」
「意味が違うっての!どういうつもり?」
「言ったはずだぞ。口でいくら言っても分からないのだから、実力行使に出る、と」


しれっと悪気なく言い放つシャカに、エナガはわなわなと怒りに震えるばかりだった。
これに懲りて彼女が素行を直したかと言えば……それはまた別の話。






====
おシャカ様は確信犯です。
行儀が悪い⇒口が悪い⇒口直し(口実)的な。


トップページへ

- 36 -

*前次#


ページ: