自惚れ屋の自惚れ裏話


【自惚れ屋の自惚れ:裏話】
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唐突にやって来た知人は、開口一番突拍子もないことを言い出した。


「ムウよ。君は茶の煎れ方を知っているな?」
「………私が茶すら入れられない馬鹿とでも?」
「そうではない。君はエナガから緑茶の適切な煎れ方を聞いたのだろう?」
「要するに美味しく煎れる方法を知りたい、と」


何となくシャカの言わんとすることを察したムウが、簡潔に答えて見れば、案の定、正解とばかりにシャカが笑みを深くした。
嫌な予感がムウの脳裏を過ぎる。


「それで、何が目的でわざわざ白羊宮まで降りてきただろう?」
「君のことだ。既に分かっているのではないかね?」
「さあ何の事だか」
「むっ、客人をもてなせと言ったのは君だろう?」


ああ、言った。
確かに言った。
客人であるエナガに給仕をさせている現状を見かねて。
その結果が今、茶の煎れ方を教えろということらしい。

今思えばあの一言が余計だったのかもしれないとムウは思った。
シャカに忠告した際、どうせ考えを改めないだろうと煽ってしまったのだ。
どうせなら愛想を尽かされた方が何かと好都合です、と。

ムウの予想に反してシャカは思い直して、今に至るのだろう。
どちらにしてもこの時点でムウが面倒事に巻き込まれるのは確定した。

白を切り通して逃げることも可能だが、そうした場合、被害を受けるのは恐らくエナガ。
わざわざムウのもとを訪れてくるのだ。
ムウが駄目なら他を当たるか、最悪自己流の煎れ方を編み出した挙句、味見という名の毒見をもてなすはずの客人にしかねない。
更に言うなら、この男のことだから教えを請うたのにムウは拒否したと、エナガに言いかねない。


(仕方がありません……)


エナガの(身体、特に胃の安全の)為と思えば…と、ムウは腹を括った。





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おシャカ様のお茶はムウ様仕込みだと面白い。
そんなこんなで生まれた小話。
拍手掲載:2014/12〜。

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