被害者はカノン。


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・短編夢「幸福な不幸」の裏話・
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「エナガ、あまりサガを困らせるなよ」



爆ぜろ(いろんな意味で)、と思いつつも、あれ以上サガに悩まれても何かと面倒だと感じたカノンは、双児宮に書類を届けに来たエナガをつい窘めた。
エナガはエナガで思い当たる節がないとでも言うように、何のことだと首を傾げてカノンを見上げている。


「睡眠をとるならせめて自分の部屋で寝てやれ」


率直に告げれば、漸く得心がいったらしく、「ああ」と、エナガは一人頷いた。
エナガとて純粋無垢で何も知らない子どもではないのだから、流石にカノンの言わんとすることを理解しているらしい。
困ったような、それでいてどこか楽しげな笑みを浮かべたエナガに、面倒事が減ったとカノンが安堵したのも束の間。


「とる気がないからあそこで寝てるの」
「は?」


予想だにしなかった切り返しに、カノンは思わずエナガを二度見した。
カノンが驚愕するのも見越していたようで、エナガは口元に浮かべた笑みを一層深くする。


「流石にそろそろ釣れるかなと思っていたけど、逆効果だったみたい。やっぱりこちらから攻めた方が手っ取り早いか…」


唖然とするカノンに背を向けると、エナガはそう言い残して、恋人の不在な宮からさっさと姿を消してしまった。


「な、何なのだあいつらは……」


兄といいエナガといい人を巻き込むことにかけては天下一品らしい。
似た者同士、良い組み合わせだと言えようが、被害者としてはたまったものではない。
もれなく被害者となったカノンは、ふつふつと湧きおこってくる言いようのない苛立ちをどうして当人たちに返してやろうかとこの後思案にくれることになる。






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