「なずちゃん」
「うん?どうした?」
「あのね、秘密にしてたわけじゃ、なかったんだけど、」
「お?おう」

なごみちんとおれは放課後の今、一緒に練習メニューや振り付けなんかを話し合っていた。
みんなの『プロデューサー』として忙しくしてるあんずの分まで、おれ達Ra*bitsに力を貸してくれるなごみちん。
頑張る弟の力になりたい、Ra*bitsのみんなが大好きだからって、椚先生に許可まで取って。
普通科での生活と並行していろいろと手伝ってくれるなごみちんの存在は、本当にありがたい限りだ。
おれが『に〜ちゃん』ならなごみちんはRa*bitsの『おね〜ちゃん』。
そんななごみちんから秘密っぽいこと?の話がしたいと言われて、おれは勿論頷いた。

「光からRa*bitsのみんなを紹介される前からね、私、なずちゃんの事知ってたの」
「えっ?あ、そうだったのか?」
「うん。高校入ってからの一番仲良しさんが…Valkyrieの事大好きで」

ああ、と。
なごみちんが秘密にしてたわけじゃないと、前置きした理由がわかった。

「私もたまーに一人でライブ観に行ってたんだ。
私はその、どこかの固定ファンってほどじゃなかったんだけど…」
「うん」
「な、なずちゃん!嫌だったら話すの止めるから!やだって言ってね!」
「はは、うん。ありがとな。
確かにびっくりしたけど…でも嫌じゃないから、話してくれ」

そう言うと、なごみちんは少しほっとしたように、寂しそうに笑った。

「友達と前の方で見てた。なずちゃんがいた、Valkyrieの最後の舞台」
「…うん」
「だから……光がRa*bitsのメンバーを紹介してくれた時、とってもびっくりした!」

なごみちんは懐かしそうに、優しい顔で言う。

「最初はなんて思われてるかな、ってちょっと心配だった。私はなずちゃんの事知ってたから、余計にね。
でもね、創ちゃんや友ちゃんの事を知るのと一緒に、なずちゃんの事もたくさん知ったよ」
「例えば?」
「んっとね、お顔は可愛いんだけど、男らしいとことか!教えるのが上手なとことか!
Valkyrieの舞台見てるだけじゃわかんなかったこと、なずちゃんと話してみて初めてわかったこと、いっぱいいっぱいあった!」

ちょっとぽやっとしてるけど、なごみちんはみんなの事をよく見てる子だ。
こうやって言葉にして言ってもらうとそれがよくわかる。

「私はなずちゃんが、こんな風に笑う人だって知れて良かったって思ってるの。
面倒見が良くって、とっても頼りになる『に〜ちゃん』だって!
なずちゃんのことを知ってくたびに、Ra*bitsのうさぎちゃん達がなずちゃんと出会えて、ほんとにほんとに良かったって思ってた」

だから、なずちゃんがみんなの『に〜ちゃん』で良かった〜って、ずっとありがとうを言いたくて!
話し始めが怖い感じになっちゃって、ごめんね。

その言葉を聞いて、悲しくないのに泣いちゃいそうだ。

「私はアイドルじゃなくて、プロデューサーでもなくて、一歩外に出るとただのファンになっちゃうけど。
弟が心配なおね〜ちゃんじゃなくって、今だけは一緒にね、Ra*bitsのみんなと一緒に大きくなりたい!
あんずちゃんみたいにはできなくても、精一杯みんなが輝くためのお手伝いをするから。
なずちゃんは一人じゃないから、一緒に頑張らせてね、なずちゃん」

椚先生にも許可もらったしね!と、光ちんそっくりに胸を張るなごみちんの笑顔があったかい。
溢れそうな涙もそのままにおれは大きく頷いた。

「おれも、なごみちんが手伝ってくれるようになって、ほんとにほんとに助かってる!
なごみちんがRa*bitsの『おね〜ちゃん』で良かったよ」
「ほんとに?」
「ほんと!」

ほっぺを赤くして照れ臭そうにするなごみちん。
おれも……なごみちんが話してくれたんだから、自分の気持ちをちゃんと話さないとだよな。

「んと、あのな、なごみちん。
おれ、褒められるのって見た目の事が多くてさ。実際何でも器用にできるほうでもなかったから、みんなが褒めてくれる事をしようと思って、夢ノ咲学院に入ったんだ」
「そうだったんだ」
「うん。でさ、アイドル科だし、やっぱり見た目で判断される事が多いんだよな。
でも、おれだって男だから……可愛いって言われてもそんなに嬉しくないんだよ。ほんとは」

褒めてもらえるのは嬉しいけど、おれだって普通の男だ。
普通に男の子が好きなものが好きだし、大きな声で笑ったりもする。

「ま、可愛いって言われるのはもういいんだけどさ。
それでも、おれのこの見た目で普通の男の子みたいに遊んだり、笑ったり、話したりすると、イメージと違うって言われるんだ。
それがずっとず〜っと…もやもやしてた」

おれのままじゃ受け入れてもらえないみたいで。

「でもなごみちんは、俺の事を知れて良かったって言ってくれた。見た目もだろうけど、ちゃんとおれの事を見てくれたんだよな。
それをおれに伝えてくれた。めちゃくちゃ嬉しいんだぞ!」
「ふへへ、話して良かったなあ」
「だから、おれからもお礼を言わせてくれ。
ありがとうなごみちん、おれたちRa*bitsの『おね〜ちゃん』になってくれて。おれの事ちゃんと見て、話してくれて。
あと1年もないけど、おれたちにできる精一杯で!一緒にRa*bitsのみんなを育ててこう!」

2人とも悲しくなんてなくて、ただひたすら嬉しいだけなんだけど。
おれもなごみちんも泣いちゃって、これからもよろしくねって握手して、笑いあった。

おれたちが一緒にRa*bitsを大事に大事に育てようって決めた、夏の少し前。

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