告白 ※ツイショリレー企画


聞き間違いでなければ「付き合ってほしい」って言われたはず。
……告白された?スガさんに?

ありえない。もしかしたら「どこにですか」なんてボケるのが正解なのかもしれない。
そうじゃなかったら、都合の良い夢だ。





いつもより部活が終わるのが遅くて、珍しく男バレと坂の下商店で鉢合わせた。
話している内にそのまま集団でぞろぞろと帰ることになり、私は自然とスガさんと最後尾にいた。

暦の上では春とは言え、まだ宮城には寒さが残っていて。
春休み真っ只中の今日も部活が終わって帰る頃には外は既に薄暗い。


「あ、そうだ。今度一緒に行こ、その店」
「嫌ですよ!私は辛いの好きじゃないんですってば!」
「本当に美味いんだって」
「スガさん。辛いっていうのは味覚じゃなくて痛覚で感じてるらしいですよ。
 私スガさんみたいにドMじゃないので」
「先輩にそんなこと言うのはこの口かっ!」
「いひゃい!いひゃいれす!」

温まる物が食べたい、その一言から始まったスガさん曰くうま辛いらしい麻婆豆腐の話。
いつものように軽口を叩いて、そんな雰囲気じゃなかったはずなのに。
つねっていた両頬から手を離したスガさんが、そのまま私の両手を掴んでゆるく微笑んだ。

「あーやっぱ俺、お前のことすっごい好き」
「はい?」
「俺と付き合ってほしいんだけど」

……やっぱり、激辛麻婆豆腐の話なんてしてたんだから
「そのお店に付き合って」って解釈が正解なのかも。

「だ、だから!辛い物ダメなんですって!ほら、置いて行かれてますよ私達」

気付けば一緒に帰っていたはずのバレー部とは距離があいていて、
いつもならそろそろ田中か西谷あたりに大声で呼ばれてもおかしくないのに。
助けを求めるような気持ちで、そちらに視線を向けてみた。

「残念でした。あいつらには告るから邪魔すんなよーって言っといた」
「や…あの…」
「な、返事聞かせて?」





優等生。爽やかで優しい好青年。
そういう人だと思ってた。もちろんその印象も間違ってはいなかったけど。

時折、田中の扱いが雑になったり、旭さんに辛辣になったり、
悪ノリだってする、普通の男子高校生な面もたくさんあって、

色んな表情を知る内に、少しずつ、少しずつ気持ちは積もっていって、
私は静かに恋をした。





「……本気ですか?お店にじゃなくて?夢でもなくて?」
「さっきほっぺ抓っただろー」

そう答える表情はイキイキしてて楽しそう。
告白する人ってもっと緊張とか恥じらいとか、そういう顔をすると思ってた。
なのに今そうなっているのは私の方で。きっと私の気持ちなんてお見通しなんだ。

「スガさん、ズルいです」
「んー?」
「私がスガさん好きなの知ってたんですね」
「うわ、ばれた」

悪戯っ子のように笑ったスガさんは、手を繋ぎ直すとゆっくりと帰り道へ足を進めた。

「そらお前の態度が変わるのにも気付くべ。ずっと見てたんだから」
「……え?」
「俺の方が先に好きになってたってこと」

だから、どうして平然とそんなことが言えてしまうんですか。
私なんて顔は真っ赤だし心臓は飛び出しそうだし、
スガさんが手を引いてくれてなければ歩くどころかそのまましゃがみ込んでしまいそうなのに。

「本当、ズルい」
「んー?なんてー?」

俯いたまま歩く私の小さな呟きは聞き取れなかったみたいだから、せめてもの反撃。

「大好き、って言ったんです!」

照れ臭そうに笑って、ほんのり染まった頬。
何より、とびきり嬉しそうな表情。

また少し気持ちが積もった。
     2015.03.20

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