飴色の紅茶が氷と共にグラスの中で揺れる。

「……あまり、からかわないでくださいな」

 ふわりと香りをまとって、ノルンが微笑んだ。その髪を梳くように撫でる指、その手に少し困ったような表情で。
 彼女の右側、横に並んで座ったジュリウスは少しばかり惜しそうな様子で呟く。いつ見ても綺麗だ。落ち着いた心地の良い低音で紡がれる言葉に、髪のこととはわかっていてもどきどきしてしまう。ノルンは淡い朱色を刷いた頬で答えた。

「毎日かかさず、手入れしていますもの」

 あなたがそうやって褒めてくれるから。その言葉はなんだか気恥ずかしくて、喉の奥へと沈んでいった。それなのに、どうして、ジュリウスはまるで全てわかっているかのように、ノルンの髪を手で掬い上げ、キスを落とす。

「気に入っているんだ。光を浴びてきらきらした髪も、そうやってひたむきに努力するところも」
「……ジュリウス? あなた、面白がっているでしょう」
「どうだろうな」

 しらばっくれていることは明らかだ。筒抜け。きっとそれは、同じように。だから悔しいだなんて思わない。寧ろきっと素晴らしいことなのだ。心を重ねて、通じ合って、理解しあう。……なんて、本当のことを言えば彼のあの余裕を崩せないのは少し、悔しい。

「あなたですから、それでもいいって思えるんですのよ」

 小声で呟いて、ノルンはアイスティーを口に含んだ。すっきりとした甘さが広がる。ちらりと横目にジュリウスを見ると、彼はどこか満足げに微笑を浮かべていた。何か食べるか、と聞かれてノルンは小さく頷く。どうやらまだまだ敵わないようだ。いつだって結局彼のペースで、リードされている。エスコートなんていうと、この場合は少し大袈裟かもしれないけれど。
 左手で頬を撫でる。からりと音を立てる氷、その涼しげな響きとは裏腹に触れたその場所は少し熱かった。


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雪音様宅ノルンちゃんお借りしました!




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