「……くしゅん!」


風邪だろうか。
平原は雨が降っており、雨は体の熱を奪う。任務が長引いた影響で体を冷やしてしまったのかもしれない。
動き回っている間は特に気にならなかったが戦闘を終え、一度寒さを意識してしまうと体はどんどん熱を奪われていくような、そんな感覚に陥る。


「うぅ……寒いですねぇ……」
「そうか?」


キトリーはギルバートと比べて露出の多い服を着ている。当然ながらギルバートより寒さを感じるだろう。
任務がこんなにも長引くと分かっていたならもう少しあたたかい格好をしてきたのに。
アラガミの動きなんて読めないしこちらのコンディションや作戦区域の天候などによっても左右されるのでそんなこと分かるはずもないのだが。


「風邪ひかないようにな」
「分かってますよー……早く迎えのヘリ来ませんかねぇ」


言いながらぶるぶると肩を震わせた。やっぱり寒いらしい。
迎えはもう暫くかかると言っていたような気がする。その間、体を冷やし続けたら本当に風邪をひいてしまうのではないだろうか。
仕方ない、というギルバートの呟きと共にキトリーの肩に何かがかけられた。それが先程まで彼が着ていた上着だと気付くまでに十数秒。


「え……えっ?」
「これ以上体を冷やしたら困るだろ。他に代わりのものはないし俺の上着で我慢してくれ」
「で、でも、それじゃあ、ギルが風邪をひきますよ……?」
「俺はキトリーよりは寒さに強い自信がある」


気にするな、と半ば強引に渡されてしまい明らかにサイズの合っていないギルバートの上着を羽織る。
確かにさっきよりはあたたかい。あたたかいのだが、妙に意識してしまって恥ずかしい。
何せ相手はギルバートだ。キトリーが密かに焦がれている相手である。意識するなというほうが無理な話だ。


「寒くないか?」
「あたたかい、です」
「……じゃあ帰るか。そろそろ迎えも来るだろ」


彼の上着を羽織っているだけだというのに、まだドキドキしている。
この心臓の音がギルバートにも聞こえてしまうのではないかと有り得ない心配をしてしまう。
どうやら、それほど彼のことが好きらしい。




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