「あれ、ギル。今戻ってきたんですか?」
「ああ。そういうキトリーは今から任務か?」
「今日はシエルと一緒にサリエルの討伐ですよ」
朝から他の任務で出払っていたギルバートの姿をエントランスで見つけた。
彼は元々ブラッドのメンバーとして感応種など通常の神機使いでは対処できないアラガミが出現した際には駆り出されることが多く、ベテラン神機使いとして頼られることも少なくない。
そのせいなのか今回の敵が通常より高い攻撃力を持っている個体だったのか或いはその両方か。
とにかく、いつもより疲れているように見えた。尤も、朝から任務に出ていたのだから疲れていて当然かもしれないが。
「キトリー」
「どうしたんですか?」
「怪我とかしないよう気をつけろよ。サリエルの場合は猛毒も怖いからな」
「危なかったら逃げますから大丈夫ですよー」
まあ、シエルが一緒なら恐らく大丈夫だろうが、とギルバートは苦笑する。
疲れている筈なのに先にこうして仲間の身を案じてくれる彼の優しさが嬉しい。
「ギルも、ちゃんと休んでくださいね。もしもギルが倒れたりしたらわたしが悲しいです」
「ああ、ありがとな」
キトリーの桜色の頭を撫でながらギルバートは小さく笑った。
ギルバートが倒れてキトリーが悲しむように、キトリーに何かあったらギルバートもつらい。
嬉しそうにふにゃりと顔を綻ばせるキトリーはふと思い出したように口を開いた。
「そういえばハルさんから聞いたんですけど、極東では約束するときに“指切り”をするらしいです」
「指切り?」
「だからわたし、ギルと指切りしたいです」
「……まあ、たまにはこういうのも悪くないか」
お互いの小指を絡めて指切りげんまん。
たったそれだけのことなのにあたたかい気持ちになるのは指切りの効果なのか、それとも相手がギルバートだからなのか。
指切った、と小指が離れてしまうその瞬間が少しだけ名残惜しい。それでも、任務前に勇気を貰えたような気がする。
「指切りしたんですからちゃんと休んでくださいね」
「お前こそ、無事に帰って来いよ」
それでは行ってきます、と幸せそうに笑んだ彼女を見送って、心が満たされるのを感じた。
|
ALICE+
|