朝、起きたら一番におはようを言いたい。
ミッションの前には「行ってきます」「いってらっしゃい」なんて当たり前の言葉を交わして、戻ってきたら「お帰りなさい」と出迎えたい。
何気ないやり取りで笑ったり喧嘩したりして、「おやすみなさい」という彼との挨拶で一日を終えることが出来たらそれはとても幸せなことだろう。
特別な出来事がなくても、変わらない日々を繰り返すだけで満足だった。
「キトリー、嬉しそうだな。何かいいことでもあったのか?」
「嬉しいのは本当ですけど、別に特別なことはないですよー」
「?」
えへへ、と頬を緩ませるキトリーとは対照的に怪訝そうな表情のギルバート。
これが漫画なら彼の頭上にはたくさんの疑問符が浮かんでいるのだろう。
まさか、あなたと一緒にいられることが嬉しくてつい顔が綻ぶだなんて、彼には恥ずかしくて言えないのだけれど。
「まあ、何があったのかは分からないが……キトリーが嬉しいなら俺も嬉しい」
帽子をいつもより深くかぶり視線を逸らしたギルバートの表情はよく見えない。
ちらりと見えた耳が少し赤かった気がする。照れ隠しだろうか。彼のそんな反応に何故か自分まで照れてしまう。
思わずかあっと赤くなる顔を隠すように地面に視線を落とした。
「……ギルがずっと一緒にいてくれるなら、わたしはそれだけで嬉しいですよ」
小さな声でそう漏らして、キトリーは恥ずかしそうに微笑んだ。
やっぱり彼と過ごせる当たり前の日常が幸せだなあ、なんて。
title/誰そ彼
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