「……ギル、あの」


ギルバートの少し後ろを歩いていたキトリーがふと口を開いた。
普段なら隣を歩いているであろう彼女は先程からずっとギルバートの後ろを歩く。その姿はまるで親鳥を追いかける雛鳥のよう。
振り返った彼に言うべきか一瞬躊躇し、けれど意を決したように言葉を紡いだ。


「やっぱりギルの隣を歩いてもいいですか……? その、ハルさんから極東では女の人は男の人の後ろを歩くって聞いたんですけど」
「ハルさんが?」


どうやら喧嘩したわけでもないのにキトリーがギルバートの隣を歩こうとしなかったのはハルオミに原因があるらしい。
極東出身ではなく、極東の文化に詳しいわけでもないギルバートにはキトリーの言葉の意味もよく分からなかった。
ただ、本当にそのような文化があるのかもしれないが少なくともキトリーの場合はハルオミにからかわれていると、それだけははっきりと分かる。
どうせあの人のことだ、他に理由なんてないだろう。ギルバートは深い溜め息をついた。


「キトリーが隣を歩きたいなら好きにすればいい」
「後ろを歩くのも嫌じゃないんですよ。ただ、ギルの顔も見えませんし手もちゃんと繋げないので隣がいい、です……」


言ってしまってから、自分の発言に恥ずかしくなる。後半、消え入りそうな声でそう言ったキトリーにギルバートは思わず笑う。
自らの発言で真っ赤になるなんて、そういう反応はかわいいというか。
何を吹き込んだのかは知らないがこんな彼女の姿を見ることが出来たのだからハルオミには感謝しない、こともない。
キトリーにこれ以上余計なことを吹き込まれるのは非常に困るが。


「まあ、俺としてもキトリーが隣にいてくれたほうが安心するかもな」


ギルバートの隣を歩くのは意識すると少しドキドキするけれど。
さり気なく差し出された彼の手に自らの手を重ねて、キトリーは照れたようにはにかんだ。





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