アナグラに戻ってきたキトリーは、いつもより嬉しそうだった。
鼻歌交じりにラウンジに向かう彼女の少し後ろを苦笑しながら歩いているのはギルバート。
「ギルに買ってもらったんですよー」とにこにこ笑う彼女が持っている袋の中にはチョコレートとバニラのアイスクリーム。
ラウンジのカウンターに辿り着くと腰を下ろし、袋からアイスクリームを取り出した。それを開封して、一口ぱくり。
「ギル、このアイスおいしいです」
「そうか、良かったな」
「ギルが買ってくれたからいつもよりもっとおいしく感じるんですかねー?」
なんて無邪気に言いながらアイスクリームをスプーンで口に運んでいたキトリーの動きが止まった。
何かを考えているのか考えていないのか定かではないが、首を傾げた彼女はふと自分の口に運ぼうとしていたそれをギルバートの口元へ運ぶ。
突然の彼女の行動に固まっていると、キトリーは不思議そうな表情でギルバートを見つめていた。
「はんぶんこ、です。早く食べないとアイスが溶けちゃいますよー?」
目の前に差し出されたこれを食べろ、というのだろうか。
確かに「はんぶんこ」を提案したのはギルバートのほうだが、ムツミから器を借りて半分ほど器に移すことを想定していた。
それがまさかキトリーが先程まで使っていたスプーンで直接、口元まで運ばれるのは流石に想定外だ。
所謂間接キス。しかしキトリーはそのことに気付いていないのか、特に意識している様子はない。
自分だけが意識しているのが妙に恥ずかしくて、だが逃げることも出来ず、意を決して目の前のアイスクリームをぱくりと食べた。
今の自分は果たしてどんな表情をしているのだろう。――あまり知りたくないような気もする。
「おいしいですかー?」
「……ああ、まあ」
気のせいか、いつも以上にチョコレートのアイスクリームが甘く感じた。
落ち着かなくて視線を泳がせていたギルバートの頬にキトリーはバニラアイスのカップをあてた。冷たい。
「じゃあ次はギルの番ですよー。はんぶんこなのに、わたしがギルにあげただけじゃ不公平です」
「……もうどうにでもなれ……」
嫌なわけではないけれども、ラウンジなのだからこの光景をブラッドのメンバーやハルオミに見られていないとは限らない。
誰かに見られたらいろんな意味で終わってしまう、なんて。
キトリーが今のギルバートとのやりとりが周りからどう見えているか気付いて赤くなるのが先か、誰か――特にロミオやハルオミに見られてからかわれるのが先か。
title/誰そ彼
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