「おい、キトリー」
桃色の少女にギルバートが声をかけるが返事はない。どうやら深く眠っているようだ。
先程までいつもよりハードな任務に出かけていたから、きっと疲れてしまったのだろう。同じ任務に同行していたギルバートもかなり疲労が溜まっている。
神機使いになって1年目の少女が、部隊を率いてベテランでもつらい任務をこなしていたのだ。出来ることならこのまま休ませてやりたい、とは思う。
「……ここがキトリーの部屋だったらいくらでも寝かせてやるんだが」
残念ながらここはアナグラのラウンジである。カウンターに突っ伏して眠る幸せそうなキトリーを起こすのは申し訳なく思うが、こんなところで寝ても体は休まらないだろう。
それに、彼女が風邪をひいてしまったら困る。
しかし目の前のキトリーは暫く目を覚ましそうにない。どうしたものかと思案する。
「起きないならギルが部屋まで運んであげたらいいんじゃないかな」
ふと、後ろからひょっこり顔を覗かせたナナの発言に――別に何かを飲んでいたというわけではないが、思わず噴き出しそうになる。
どうしてそうなるんだ。確かに誰かが部屋に運ぶ必要はあると思うが。
「私やシエルちゃんが運ぶのは大変だし、キトリーを運ぶならギルが一番じゃないかなって。シエルちゃんも言ってた」
「ギルなら彼女も喜ぶのではないかと」
一体何処から現れたのか、シエルまでそんなことを口にする。
彼女達の言うとおり、キトリーは決して太っているわけではないが、やはり同年代の女性が運ぶのは苦労するだろう。極東の誰か……特にハルオミ辺りに任せるくらいなら自分が運びたい、とも思う。
「…………まあ、それが最善なのかもしれないが」
仕方ない、と呟いて相変わらず眠ったままのキトリーを起こさないようにゆっくりと抱える。
どんな夢を見ているのか、小さく「ギル……」と呟いたキトリーに苦笑した。まあ、彼女が幸せそうだからそれでいいかもしれない。
title/たとえば僕が
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