「次のミナトの停泊日、時間あるか?」
 唐突にそんなことをたずねられて、そしてそれが意外な人の口から発せられたものだから驚いて、ミネットは返事も忘れて瞬きをする。
「えと。あるけど、どうしたの?」
「……その。出かける予定がある、んだが」
 言葉が途切れる。けれども言いよどむような、考えるような一瞬を置いてニールは続けた。
「お前さえよければ一緒にどう、かと」
 思ってだな。尻すぼみに消えていった言葉に、ミネットはさらにその瞼でぱちぱちとシャッターを切る。ええと。それって、それって。
「お出かけの誘い……ってこと?」
「うっ……、いや、無理強いはしない。が」
 言葉を要約され、少しうろたえる様にしてニールが目線をさまよわせる。けれど。そんなことに気づく余裕もなく、ミネットは身を乗り出した。
 彼のその滅多にない提案が、“実はミネットの望んだ何かでした”なんていって、夢幻と消えてしまわないように。
「い、行くよ!」
 少し興奮気味に。
「行く、行く! どこへでも、どこまでも!!」
 急に張り上げた声で彼を怯ませてしまったことを理解して、ミネットはようやく口を噤んだ。随分はしゃいでいると、思われてしまっただろうか。
 でも、だって、お誘い。たまにだけあるわたしたちの休日の、たまにだけあるお出かけの、お誘い。それは何度だって歓迎したいくらい、嬉しいけど。でもその感情を悟られてしまうことはなんというかちょっと。つまりそう、恥ずかしいんだ。筒抜けになってしまうのはあんまり、歓迎したくないことだから。
 ミネットはまだぷかぷかと浮かび上がっていきそうな心をぎゅっと抑え込んで、居住まいを正す。
 そんな様子を一頻り眺めたニールは、仕様がないやつだなんてため息をつくように、或いは安堵し気を抜くように、息を吐いた。
「……わかった。当日、迎えに行くよ」
 普段より幾分か、表情を和らげて。



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