想像をしていた。カカオと砂糖の甘い香りが漂う部屋の中で、それをぐるぐるとかき混ぜながら。
 ――このチョコレートを贈る相手は、一体どんな顔をするだろうか、と。
 そう思考を巡らせるたびミネットは己の中の甘い感情を自覚して、まるでそれと釣り合いでも取るかのように苦い顔でううんと唸った。
 ……もう何度目になるかは覚えていない。それほどたくさん、たっくさん想像したのだ。バレンタインが近づくたび。何を贈るか考えるたび。材料を買いに行くときも。こうして作っている間だって。何度も何度もシミュレーションして、どうやって渡そうか、なんて言おうか考えて。そうして繰り返し想像してみた。あの人がどんな顔をするかってこと。
 まるで、物語の中の恋する乙女のようだ。いや、実際恋するという部分に関しては全くその通りなのだろうけれど。温められることですっかり形をなくしたチョコレートを少しだけ余計にかき回す。頭の中で、想像上の相手がミネットに語りかける。
 ――
 何度も想像して、いくらかのパターンも考えて。……だけども、君、わかりやすいからさ。勝手な想像だけど、妙にそれに自信あるから、さ。だから困る。すごく困る。

「ああ、もう。うるさいなあ……」

 脈打つ心臓が痛い。耳が熱い。こんな風になってしまうのは全部あの人のせい。だからもういっそ、全部渡してしまおうと思う。おかしくなった気持ちごとチョコレートを作って。
 それで、想像通りの表情でもしようものなら、言ってやるんだ。大好きだよ、って。そうしたら、ちょっとくらいは、驚いてくれるだろうか。



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