柔らかな布団に体を投げ出して、スグリはその頭の中に真新しい記憶を広げる。祭り、お面、甚平、りんご飴。それらはいつだってスグリの、キタカミの里のそばにあるものだったけれども、今回は。

「友達……だって」

 ぽつりと小さく口にしてみると、まるでりんご飴を齧ったときのような心地になった。じんわりと熱を帯びる胸にスグリは寝そべったまま目を細める。友達、……友達なんだ。その言葉の響きだけで、自然と頬が上がってしまう。それほど、アオイの存在はスグリにとっては鮮烈だった。
 友といってもらえたことがくすぐったくて、嬉しくてたまらない。これまで、そんな経験をしたことなどなかったから。もちろん、姉と一緒とか、ついでとか、そんなものではなかった。彼女はおれに、おれだけに向けて言ってくれたのだ。それがなおのことスグリの胸中を柔らかいものでくるんで強くくすぐっていく。
 だから見慣れたお祭りも、普段よりもずっとずっと楽しかった。お面は渡せなかったけれど、りんご飴を差し出すことはできた。ありがとうと笑うアオイの顔はしばらく忘れられないかもしれない。
 オリエンテーションでも祭りでもたくさん歩いて疲れているはずなのに、それ以上の充足感で満たされていた。

「明日も……アオイと一緒にいられる」

 オリエンテーションは残り僅かだけれど、でもまだ残っていることに違いない。それが終わるまではアオイと一緒に過ごせる。──ああ、楽しみだ。明日も、その先もずっとアオイが一緒にいてくれたらいいのに。そしたらきっと、ずっと楽しいのに。
 疲れを自覚していないとはいえ、ふわふわと浮ついた気持ちは布団に沈み込むスグリの体を次第に眠りへと誘っていく。
 明日はどんな話ができるだろうか。どこを歩こうか。キタカミの綺麗な景色を見せてあげたい。そしたら、アオイはどんな顔をするだろうか。そればかりを考えながらスグリは夢の中に落ちていく。ああ、ああ。明日はどんな日になるのだろう。




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