ブラッカにとってアインという存在はかけがえのないもので、それを自分自身でも十分に自覚している。有り体に言えば、とても大事だった。復讐に焼き尽くさんとしたこの身にまだそんな感情が残っていたものかと思うけれども、事実、そこにそういう思いがあるものだからもう認めるほかなかった。そしてその思いは、彼女から渡された指輪という形で今もブラッカのもとで確かに輝きを放っている。陽の光をちかりと反射させるそれを見ていると、不思議なものだが、いつのまにかブラッカはその表情を和らげてしまっていた。……とはいえそれは、傍から見る分には余程の理解者でもない限りわからない程度の変化であったけれど。
「ブラッカ、ごはんできたよ?」
部屋の仕切りの向こうからひょいと顔を覗かせるその人にブラッカはぎくりと僅かに体を強張らせた。そしてその自らの挙動に無意識に広げていた気の緩みを実感して、ああまたか、と嘲笑する。
幸いにもこれは、ここでだけ発生する弛みのようなものだった。もちろん仕事や戦闘での外部に影響を及ばせることはないという意味でだ。それはブラッカのプライドが許すはずもない。傭兵ブラッカの銃弾が狙いを外すことなど、有り得ないのだから。
今行く、と同居人に返事をしてブラッカは手のひらに握りこんだ指輪をチェーンに通して仕舞い込む。ここで感じるいくつかのそれは浮かび上がるような覚束ない心地だが、たまに浸るのはそう悪いものではなかった。これは自分の調子を狂わせるものではあれど、その弾道をより確かなものにする力になると、ブラッカは知っているからだ。
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